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【クラシック オブ ザ デイ】スタイリッシュな外観のホットなゴルフ?FFスポーツ「VW コラード」物語

2022年1月21日

Gラーダー(スーパーチャージャー)がコラードを技術的モニュメントに変える。VWコラードはこれからの名車であり、価格もまだリーズナブルといえる。今購入すれば、時代を超えたクーペデザインとゴルフ3のハイボルテージテクノロジーを享受できる。60バージョンはダウンサイジングのパイオニアである。

そのクルマは本来レーサーになるはずだった。これまた人気モデルだった「VWシロッコ」と同時期に製造されたフォルクスワーゲンのプレミアムスポーツクーペ「コラード」。伝説のGラーダー(スーパーチャージャー)を搭載した車が市場に出てから34年が経つ。当初は「タイフン」というモデル名でデビューする予定だった。しかし、VWは、「コラード」という名前を代わりに冠した。その「Corrado」という名は、スペイン語で「走る」を意味する「correr」に由来している。そして、「コラード」は今も元気に走り続けている。その上、これからの名作として人気が出てきているため、すでに価格は上昇し始めている。

当時も、コックピットにあるリアスポイラー用のボタンがヒットした。120km/hから自動的に伸び、20km/hから自動的に縮むリアスポイラーだ。「コラード」は発売当初から、現在でも特に有名な特別な技術装備である「Gスーパーチャージャー」を搭載していた。これにより、1.8リッターの排気量から160馬力を発揮した。その後、115馬力と136馬力の2種類の4バルブエンジン、190馬力のトップバージョン、「VR6」が登場した。

フォルクスワーゲン初の電動伸縮式リアウイングを採用した「コラード」。

過給機の技術は当時としてはかなり新しいもので、ターボと同じように機械式過給機で圧力を高めるものである。しかし、ダウンサイジングのパイオニアである「G型スーパーチャージャー」は、メカがすぐに壊れてしまうという弱点もある。そして、交換部品が600ユーロ(約8万円)と高価になる。しかし、そのうち摩耗や破損を認識したら、スーパーチャージャーを専門家に修理してもらうことも可能だ。

クラシックカーファンのための便利グッズ

VWは「コラード」で、1980年代の明確な一歩を踏み出そうとしたのである。当初は「シロッコII」の後継車として計画されたが、高度な技術力と収益性の高さから、最終的には「シロッコ」の上位車種として位置づけられ、「シロッコ」と並行して提供されることになった。1988年当時、「G60」の新車価格は、最も安い「シロッコ」の約2倍、42,000マルク(約280万円)だった。

Gチャージャーはダウンサイジングの最初の試みであったが、VWはそれ以上開発や生産化を追求することはなかった。

「VWコラード」は、「ゴルフIII」の技術と走りを、オスナブリュックのVWエキスパート、カルマンが生産したコンパクトスポーツカーのボディに取り入れたモデルである。デザイナー、ヘルベルト シェーファーが手がけたこのコンパクトスポーツカーは、ややずんぐりしているが、ダイナミックでもある。

トップモデルは「VR6」で、排気量2.8リッターまたは2.9リッター、当初174馬力という当時では異例の6気筒エンジンを搭載していた。その後、190馬力までパワーアップした。「VWゴルフ」とは対照的に「ゴルフVR6シンクロ」のような全輪駆動はなかった。

コラードのシャシーはしっかりしているが、どちらかというとスポーティさに欠ける。しかし、アンダーステア傾向になることはない。

初の電動リアウイングがもたらした235km/h

1988年に発表された「コラード」は、あらゆる技術革新を盛り込んだスポーティな2+2クーペとして、人目を引く存在となった。フォルクスワーゲンでは初めてバンパーをボディカラーで塗装し、フロントウイングはヴォルフスブルク社初のCAD部品とした。1993年にはカブリオレのデザインスタディも行われたが、これは量産化されなかった。当初、「VWコラード」は「G60」として、いわゆるギャレットのスパイラルチャージャーを搭載し、わずか1.8リッターの4気筒エンジンから160馬力という驚異的な出力を絞り出し、その名を轟かせたのである。当時、「VWコラードG60」は、225km/hというフォルクスワーゲン史上最速の量産車であった。リアアクスルの揚力を60%以上低減するVW初の電動伸縮式リアスポイラーとの組み合わせで、「VR6」は高速道路でコラードを約235km/hまで押し上げたほどだ。

コラードはシロッコの第3シリーズとなるはずだったが、VWは両車を並行して製造していた。

タイトだが、ややスポーティさに欠けるシャシー

「ゴルフ」に加え、「コラード」もフォルクスワーゲンとしては比較的大胆なエクステリアデザインを持っていた。室内には、フロントとリアに均整のとれたスポーツシートが配置され、「パサートB3」シリーズのコックピットが明確に配置されていた。そして1993年のモデルチェンジでは、微妙に新しい方向性を打ち出した。大型のトグルスイッチはプッシュボタンに変わり、要望に応じてドアやシートにシックなレザーが採用された。シャシーはしっかりとしているが、正直なところ、あまりスポーティさはない。エンジン出力が高いため、勢いよく走るとステアリングに駆動力がかかるのが目立つ。クラシックカーを探している人は、このことを念頭に置いて、タイロッド、ドライブシャフト、ブレーキなどを入念にチェックする必要がある。

115馬力のベーシックモデルは比較的リーズナブルな価格

1995年まで、VWコラードは合計97,535台が販売された。現在、このクラシックVWは5,000台以上がドイツの道路を走っている。市場を観察するクラシックデータによれば、「コラード」の価格は上昇していると言う。「若い頃に車を体験した世代が、徐々に引き継いでいる」とクラシックデータの専門員は語る。状態の良い「G60」は10,000ユーロ(約132万円)前後から入手可能だ。

わずか1.8リッターの排気量で160馬力を発揮する。現在ではターボで可能なことを、当時はGスーパーチャージャーで実現したのである。

現在では、10万kmを大きく下回るコレクターズコンディションの車両を、最大3万ユーロ(約396万円)で提供するディーラーもある。スペアパーツはたいてい簡単に手に入るし、出来栄えもまずまずだ。
最も値上げ幅が少ないのは、115馬力のベースモデルだ。トップモデルの「コラードVR6」は、値上がり傾向だ。しかし、錆や電気系統(特にウィンドウリフター、サンルーフ、エアコン/ベンチレーション)の問題とは別に、シリンダーヘッドガスケットには気を配る必要がある。

「フォルクスワーゲン コラード」の先祖?はおそらく「フォルクスワーゲン シロッコ」であり、もっと前にさかのぼるとカルマンギアではなかろうか、と推測されるが、とにかくフォルクスワーゲンの中では、お洒落でちょっとスポーティな2ドア(ハッチバック)というカテゴリーの車輛である。シロッコに比べると、こちらには「Gラ-ダー」というスーパーチャージャーが装備されているので、より走りの本格派ではあるが、それでも決してカリカリのスポーツカーというクルマではない。
今回のレポートにも記されている通り、各部のウイークポイントも多いし、なによりあまり数が出ていない車なので、パーツの供給なども限界があるだろう。

「フォルクスワーゲン ゴルフ」のようにスペアパーツが潤沢ではないので、探すのにも購入にもなかなか難しい面は多いと思う。それでも、この形と希少性に魅力を感じ、「コラード」をチョイスする人の気持ちもよくわかる。人の持っていないもの、あるいはマイナーなものだからこそ欲しい、そういった部分こそ、本来エンスージャストの持っている本質の部分なのである。
そう考えると約400万円という価格も安くはないが、決して法外なものでもないかな、とも思えるのである。

Text: Stefan Grundhoff, Roland Wildberg
加筆: 大林晃平
Photo: Roman Raetzke