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【このクルマなんぼ?】31年、27万4千kmのメルセデス190Eの値段は?

2021年12月10日

大人気だった190E(W201)

今やクラシックカーのジャンルに入るメルセデス190。小さなガソリンエンジンを搭載したこの190は31年前のもので、かなり走っている。しかし、その一方でかなり保存状態が良く、サンルーフも付いていて、安い。しかも、オーナーは頑丈な車の状態を正直に教えてくれる。

傷や凹み、欠陥などが隠されていないところが「正直」と言えるだろう。1990年に製造されたこの「190」は、その状態が走行距離とほぼ一致しており、使用の痕跡が見られ、売り手が弱点を率直に語っているので、本当に正直な状態に見える。欠点は一見したところあまりないようだ。

アルマンダインメタリックのベンツには十分に使用された感がある。

年老いたエンジン

この1990年製のベビーベンツは、年式の割にはきれいな状態だ。ボディはところどころ再塗装されている。確かに、バンパーはみすぼらしく、インテリアのトリムにも、いくつかのひび割れが見受けられる。走行距離は274,000kmだ。売り手が言うように、このマシンは「壊れていない」が、使い古されたものではある。エンジンが温まっているときに油圧計を見ると、ある程度の情報が得られる。アイドリング時に油圧計の針が2バール以下になったら、購入はお勧めできない。

「190」は、メルセデスが初めてコンパクトクラスに進出したモデルであり、11年弱の間に180万台以上のセダン(モデルは1つしかない)が販売された大成功のモデルである。そして現在も、その多くが走り続けている。ちゃんと手を入れて直すべきところを直せば「190」は永遠に生き続けるのだ。「1.8」モデルは、1990年に発売された最後のエンジンの1つだ。このエンジンは109馬力で、経済的とされており、リッターあたり12.5kmの燃費性能を有していた。新車価格も比較的安く、1990年には33,117マルク(約215万円)と、「190」の中では圧倒的に安かった。

内装は黒で、もちろんベビーシートは価格に含まれていない!

節約家のための190

アルマディンレッドメタリックの「190」は、オプション装備をけちったそんなエコノミーカーの1台である。スチール製のスライディングルーフを装備しており、エアコンの代わりになっている。しかし、それ以外に余分なものはない。パワーステアリングとセントラルロックは標準装備されているが、ABSもエアバッグもない。ギアボックスは4速マニュアルではあるが「190」は難なく時速200kmに達することができる。しかし、スピードメーター上の走行距離の数値が比較的高いことから、過大にそれを期待してはいけない。

運転席のドアでは、トリムがすでにひび割れ始めている。

運転席のチークのパッチ(典型的な摩耗箇所)、運転席ドアのインテリアトリムのひび割れに加えて、修理すべき箇所はいくつかある。いくつかの場所で、表面にサビも発生し始めている。ラジオアンテナのソケットや、ドアのサッコボードの根元など、神経質な箇所で、プラスチックと鉄板が擦れている。下回りはきれいだと売り手は書いているが、写真がないので、ここは実際に念入りにチェックすべきだ。また、エンジンやトランスミッションのオイルが漏れていないか、エキゾーストが締まっているか、などもチェックしておきたい。

サンルーフを除いて、この190には余分なものは付いていない。

H型ナンバープレートの1.8

コンパクトなメルセデスはHナンバー(ドイツでクラシックカーに与えられるナンバープレート)なので、軽減税率で運転でき、すべての環境ゾーンで認められている。このベビーベンツは現在登録されているので、試乗の妨げになるものは何もない。アクセサリーとして、冬用のホイールと後付け用のオリジナルのテールライトがついている。

この車の価値は?

売り手は2,800ユーロ(約36万円)を提示している。同じエンジンを搭載した今年の同等モデルは、装備にもよるが、良い状態であれば6,100~8,300ユーロ(約79~108万円)で市場に出回っている。つまり、このアルマディンレッドメタリックの「eBayベンツ」はお買い得と言える。しかしすべてが良い状態であれば・・・だが。その確認のためには、必ずすべての履歴書類、請求書、小切手帳などを見せてもらおう。

「W201」はメルセデス・ベンツの歴史の中でも名車である。「W124」よりも名車という人も多いし、歴史上の中では5本の指に入る一台であることは間違いない。だが、正直言って、今回のアルマンダインレッドのこの一台は、勧めない。もうまったく勧めないし、相談されたら、相手が鬼軍曹閣下のような上司であったとしても、羽交い絞めをして「ご乱心はお控えください」と止めたくなるようなコンディションの車である。まず絶対的な走行距離が多すぎる。いくらメルセデス・ベンツといえども、30万キロ、31年経過では、交換パーツをはじめとする維持費は車輛価格の5倍以上は当たり前、あっという間に10倍くらいになってしまうかもしれない(概算でも150~200万円くらいは必要かもしれない)。外装も内装も正直いってとってもバッチくてボロそうだから、直すのには相当なコストと手間が必須だし、そこまでして再生するほどの車かと言えば、正直素直には賛成できないような装備の簡素さの個体である。なにしろエアコンがない。いくらスライディングルーフが付いていたって、夏にエアコンがなければ、特に今や東南アジア気候の日本では灼熱地獄である。ABSもエアバックもないし、初期型よりも装備が充実したはずの「W201」後期型とはいえ、その内容は極めて質素で、内容的には軽トラック並みのアメニティである。そういうクルマに整備費200万円以上を費やすか、というと……申し訳ないけれど、10年落ちくらいの「フォルクスワーゲン ゴルフ」でも買っておいた方が、お金を無駄にせず、シンプルな実用車ライフを楽しめるのでは・・・と、つい冷静に考えてしまう私は、ヴィンテージカーに乗る資格がそもそもない人種なのかもしれない・・・。

Text: Roland Wildberg
加筆: 大林晃平
Photo: ebay / constanzeaug