ハイマーML-T 570 オフロード性能を備えたメルセデス スプリンター ベースのモーターホームに初試乗&レポート
2021年11月10日
ハイマー社は、ML-Tで、何年も前から快適さにこだわる冒険家たちにアピールしてきた。我々は、ML-Tの全輪駆動仕様で、贅沢な装備を持つ特別モデル「クロスオーバー」をテストしてみた。
モーターホームを所有することで多くの人が連想するのは「自立」だ。一般的なキャラバンとは異なり、大容量の水タンクがあり、ガスの供給やオンボードバッテリーもあるため、少なくとも数日間は必需品を確保することができるようになっている。ただし、走行性能には限界がある。
「もう少しその限界レベルを拡大してみたい」。モーターホームメーカーのハイマー社では、そんなことを考えながら、「ML-T」の「クロスオーバー(CrossOver)」パッケージのスペシャルモデルを開発していたようだ。1台はパネルバンの「グランドキャニオンS」、もう1台はナローセミインテグラルの「ML-T 570」をベースにしたものだ。どちらも190馬力の6気筒エンジンと7速トルコンオートマチックトランスミッションを搭載した全輪駆動の「メルセデス スプリンター」をベースにしている。さらに、トルマ社製の6キロワットのディーゼルボイラーや、ソーラーシステムとインバーターを兼ね備えたスマートバッテリーシステムも標準装備している。
自給自足と冒険をもたらすML-T
それがこの車だ。2人のために十分なスペースを備えたコンフォートモーターホームであり、特別な外観を持っている。オフロード用タイヤ、約8cmの車高アップ、LEDヘッドライトの追加、リアに取り付けられたスペアホイール&タイヤなど、まさにアドベンチャーのような外観だ。
また、シルバーのボディに、ネオンイエローのストライプが施されており、モーターホームとしては先進的なデザインとなっている。一方、インテリアデザインは、スタンダードモデルの「ML-T」と同じものとなっていて、そこでは、ダークトーンのクラシックなウッドルックが主流だ。アンビエントLEDによる柔らかな光と、座り心地の良いシートが特徴で、居心地の良さは抜群だ。
ML-T 570クロスオーバーの内部は、外見よりも地に足がついている
入口のすぐ左側には、実用的なチェックルームがあり、そこには2つの回転式パイロットシート、複数の調整が可能なテーブル、L字型のベンチシートが隣接している。続いて、回転式の壁を備えた掃除のしやすいバスルームがあり、その反対側には、クッカーとシンクを組み合わせたコンパクトなキッチンがあり、スリムタワーコンプレッサー冷蔵庫が設置されている。後部には2つのシングルベッドがあり、食器棚とリアガレージには豊富な収納スペースが備わっている。2つのエアバッグ、電動燃料タンクドレインなどが標準装備されているほか、MBUXマルチメディアシステム、アダプティブクルーズコントロール、オートマチッククライメートコントロール、パノラミックルーフウィンドウ、オーニング、フィットしたベッドリネン、ルーフレールなどのグッズがエディションパッケージに含まれている。そして、その走りは、最高のエンジンを標準装備し、アシスタンスシステムを搭載することで、乗用車のように快適で安全なものになっている。また、優れたリアビューカメラのおかげで見晴らしがよく、操作系もわかりやすい。頑丈なタイヤにもかかわらず、室内はとても静かだ。グランドクリアランスの増加はリラックスにつながるが、野心的なオフロード走行はリアのオーバーハングによって制限される。だから全輪駆動とはいってもあまり欲張ってはならない。砂地でのドライブを救ってくれたのは、縦方向のロックだけだったからだ。
結論:
ML-Tのコンセプトは、標準状態でもすでに説得力を持っている。そのML-Tの「クロスオーバー」パッケージは、その自信に満ちた外観に見合った価格で、さらに一歩進んだものとなっている。
判定: 5点中4点
今回の「ハイマーML-T 570クロスオーバー」のように、モーターホームと全輪駆動が組み合わせられたとしたら、そりゃあ無敵だろう、と思う向きは多いだろう。しかも屋根には太陽光発電システムさえも装備され、自給自足もかなり可能となっている。こんなクルマでいったいどこに冒険に行くんだ、と思うのは都会に住んでいる者ならではの早計で、世界的にも、そして日本の各地にも、けっこう悪路も、携帯電話の電波も届かないような場所、というのはまだまだあるもの、なのだ。砂地を走れるということも素晴らしい。だが本文中にもあるように、過大な期待はしないほうが良い。というのも、ただでさえ重い車重はさらに重くなっており、自動車としての走行性能は期待してはいけないし、いくら四輪に駆動がされていたとしても、走破性能は過信しない方が良い。さらにこれだけの重さと全輪駆動のシステムのために燃費は悪いはずだし、パーフェクトな万能ヴィークルというわけではないことは言うまでもない。あくまでもちょっとだけ普通のモデルよりも、悪路とか雪道でも大丈夫ですよ、という保険程度に考えておいた方がよいだろう。
Text: Alexander Failing
加筆: 大林晃平
Photo: Sven Krieger / AUTO BILD