DSオートモビル インサイドストーリー”THE ART OF DS”エピソード3:サヴォアフェール編

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DSオートモビルのインサイドストーリーが公開されています。ヘリテージ(伝統)、デザイン、サヴォアフェール、静粛、パフォーマンス、イノベーションという6つの要素をキーワードとしたシリーズムービーです。

今回はエピソード3、”Savoir-Faire(サヴォアフェール)”をご案内いたします。フランスの文化そのものを自動車に落とし込み、他にないラグジュアリー像を提示するDS オートモビルにとって、きわめて大切にしている言葉が、このサヴォアフェールです。

皮革製品やジュエリーの世界といえばフレンチラグジュアリーブランドが世界に冠たる存在であることに異論はないでしょう。このラグジュアリーの世界でよく用いられるサヴォアフェールという言葉は、フランス人曰く「きわめて他の言語で表現することが難しい概念」といいます。英語では「French Know-How」、日本語では「匠の技」と訳されることも多いのですが、これら訳では大切なニュアンスがすっぽりと抜け落ちてしまいます。サヴォアフェールをあえて説明するならば「作品のクオリティを裏付ける経験や修練の存在。加えて創造性やクリエイティビティ、そしてそれらを希求する心持ちや自ら”よりよいものを、より美しいものを、創造せずにはいられない”という美学、美意識」というような大きな概念さえも含んでいるといえます。

今回のサヴォアフェールのインサイドストーリーの見どころは34秒あたりから登場するリゾン・ドゥ・コーヌ(Lison DE CAUNES)さんです。ドゥ・コーヌさんは伝統技法であるMarqueterie de Paille(マルケトリー・ドゥ・パイユ)を復活させた人物で、日本の人間国宝を参考に1994年にフランスで策定された伝統工芸最高技能者のMaitre d’ Art(メートルダール)に認定されています。

Marqueterie de Paille(マルケトリー・ドゥ・パイユ)とは、英語ではStraw Marquetry、つまり麦わらを使った象眼細工のことです。見る角度によって表情が変わり、プリズムのようにキラキラと立体的に光を反射する独特の質感が特徴です。16世紀にイタリアで生まれた技法で、一世紀後にフランスで開花したといわれています。

本来、象眼はカラフルで希少な木材を組み合わせて造るものが高級品とされ、欧州でどこにでもあるライ麦の麦わらを用いた象眼は代用品の側面がありました。しかし、フランスでアール・デコ時代(1920年代)に注目され、その芸術性が再評価されて高級品となってきた経緯があります。現在でもフランスやイタリアのブランドを中心に、家具や宝石箱などの木製品の装飾として用いられています(一例としてイタリアになりますが、ファッションデザイナーのジョルジョ・アルマーニの家具ブランド、アルマーニ / カーザの2021年のコーヒーテーブルにもこの技法を用いたものがありました)。

ムービー中あるようにDSオートモビルのコンセプトカーDS AERO SPORT LOUNGE(エアロ・スポート・ラウンジ)のインストルメントパネル、シートバックなどに、このMarqueterie de Paille(麦わら象眼)が用いられています。歴史的にラグジュアリーカーには、ウォールナットやアフリカンローズウッド、マホガニーといった高級木材や、それらに加えメイプルやシカモアなどの変わった木目、つまりクラロウォールナット、バーズアイメイプル、カーリーシカモアなどと呼ばれる、いわゆる杢(もく)が用いられてきました。しかし、杢は本来、天然の木に出来る突然変異や病変の部分で、もとより非常に希少です。さらに昨今の自然環境の変化、乱獲、各種国際的な資源保護観点から材料が激減しており、自動車の数万台レベルに使うにはあまりに希少すぎるという時代になってしまいました。

時代背景が変われば、ラグジュアリーという概念も変わります。

かつては代替品の側面もあったMarqueterie de Paille(麦わら象眼)のような伝統技法が2020年のジュネーヴモーターショーでワールドプレミアされたDS AERO SPORT LOUNGEであえて用いられたのは、こうした背景さえも踏まえて見ていただくとより興味深く感じていただけることでしょう。従来の価値観にとらわれない、“クルマのあたらしいラグジュアリー表現”への挑戦といえ、「伝統的技法を尊重し、いま、ここにはなない何かあたらしいものを創らずにいられない」という心持ちそのものも、サヴォアフェール的ともいえます。また、フランスのデザイン・建築文化の精華であり、DSオートモビルを語る際に欠かせない要素であるアール・デコの文化要素の一つを取り入れたという意味合いもあると考えられます。すぐれた職人とのコラボレーションを通じて、フランスのラグジュアリー文化を自動車に注入していくことはDSブランドの野望のひとつなのです。

そして、このMarqueterie de Paille(麦わら象眼)は、前述のようにアール・デコ時代に評価が高まったにもかかわらず、その後、技術の伝承者が激減し、いわゆるロストテクノロジーになりかけていたといういきさつもあります。DSオートモビルは、その技術を復活させ継承するドゥ・コーヌさんとコラボレーションすることで、文化・伝統技法の継承を支援するという側面も持っています。かつて芸術家を支え文化を発展させてきたパトロネージュ(パトロン)は、王や貴族、教皇といった人たちでした。今の時代はそういうパトロネージュをDSオートモビルのようなブランドが引き受けていくのでしょう。

DS AERO SPORT LOUNGEのエクステリアデザインは、2022年に日本でも登場する予定のプロダクションカーであるDS 4のデザインを強く示唆するものでした。同じように、Marqueterie de Paille(麦わら象眼)のインテリア装飾も、将来のDSオートモビルのいずれかのモデルに採用されるかもしれません。