【初テスト】ベントレーからのハイブリッドSUV ベントレー ベンテイガ ハイブリッドに初試乗&レポート!
2021年11月1日
充電ステーションでベントレー ベンテイガと待ち合わせ。2026年以降、ベントレーはプラグインハイブリッド車または電気自動車のみのラインナップに移行する予定だ。我々は、20万ユーロ(約2,660万円)近い価格のベンテイガ ハイブリッドをすでにテストした。その全容。
W12からプラグへ。
ベントレーは、この野心的な計画を追求している。
2020年末に発表された「ビヨンド100(Beyond100)」戦略で、ベントレーは、2030年までに完全なCO2ニュートラルになることを目指すと宣言した。
それによれば、2030年までにCO2ニュートラルを実現するために、2026年からはプラグインハイブリッド車または電気自動車のみ、2030年からは電気自動車のみを生産することを計画している。
今回の新型「ベントレー ベンテイガ ハイブリッド」は、この計画において先駆的な役割を果たすことになる。
我々は早速テストしてみた。
「ベンテイガ ハイブリッド」は、高級車ブランドとしての、初のプラグインハイブリッドモデルだ。
とはいえ、その駆動コンセプトはそれほど新しいものではなく、全長5.13メートル、全幅2メートルの英国製SUVは、すでに2019年夏からハイブリッドモデルとして提供されている。
しかし、英国では2021年のモデルイヤーに向けて、このハイブリッド版にもフェイスリフトを施している。
改良型「ベンテイガ」の最も印象的な特徴は、四角い先代に代わって楕円形のテールライトを採用したことだ。
フロントでは、「ベンテイガ」はラジエーターグリルを、より誇り高く見せるようになり、マトリクスLEDヘッドライトはデザインが変更され、スイッチを切っても輝くようになっている。
ちなみに、ハイブリッドバージョンは、フロントドアの控えめなレタリングだけでなく、運転席側に追加されたテールゲートによっても識別できるようになっている。
我々は次のように述べることができる。
ビジュアル的には多くのことが変わっているが、技術的には何も変わっていない。
パイオニアモデルの走りは、フェイスリフト前のモデルだけでなく、「アウディQ7/Q8」など、グループ内のさまざまな兄弟車にも通じるものがある。
「ベンテイガ」の高貴なボディワークの下には、340馬力の3リッターV6ガソリンエンジンが搭載されており、これを最大94kW(128馬力)の電気モーターがサポートしている。
合計すると、最高出力449馬力、システム出力700Nmにも達する。
このハイブリッドカーは、550馬力(ベンテイガV8)や635馬力(ベンテイガ スピード)の内燃機関モデルよりも優れていると言える。
しかし、日常的な使用ではどのような性能を発揮できるのだろうか。
ベンテイガは、純粋な電気の力だけで最大40kmの走行が可能
「ベントレー ベンテイガ ハイブリッド」は、電力のみで最大40kmの走行が可能となっている。
17.3kWhの容量を持つバッテリーは、トランクの下に配置されている。
ベントレーは、これまでの「ベンテイガ ハイブリッド」の顧客の約90%が純電気のみで走行していることがわかったとしている。
そのため、オーナーがより長い距離を移動することはほとんどないようだ。
さあ、それではテストを開始しよう。
「ベンテイガ ハイブリッド」には、「EVドライブ」、「ハイブリッド」、「ホールド」という3つの走行モードがある。
「ホールド」モードでは、エンジンと電気のパワーをバランスさせて充電状態を維持することができるようになっている。
発進はどのモードでも電動で、当然ながら無音だ。
ドライバーは、しばらくするとこれに慣れてくるが、通行人の困惑した顔を見ると、明らかに、クロームメッキを施した、大きな白いSUVが、次の瞬間には大きな音を立てて走り去ると思っているようだ。
「ベンテイガ」は、ドライバーに加速を促すことのないクルマだ。
AからBへとストレスを感じながら運転するのではなく、ラグジュアリーな雰囲気の中で、肩のマッサージを受けてリラックスし、1780ワットの出力と20個のスピーカーを備えたNaim製サウンドシステムからお気に入りの曲を聴きながら、何時間でもこうして運転していたいと思う。
アクセルに敏感に足を乗せて、実際に純電気で36キロを走破したが、「ベンテイガ」の快適で静かな性格に感銘を受けた。
他の多くのプラグインハイブリッド車の航続距離に比べれば、決して優れたものではないものの、2,645kgの車両重量と、スポーツカーとは似ても似つかないCd値を考えれば、これは非常に素晴らしいと言えよう。
電気自動車の残りの航続距離をより正確に推定するために、ベントレーのナビゲーションシステムは、常に地図上に青い行動半径を表示している。
バッテリーが空になると、次の充電ステーションが選択される。
「ベントレー ベンテイガ」での充電は、通行人からは批判的な目で見られる。
おそらく、私が太ったSUVで、充電ステーションを塞いで他の人の邪魔をしているとでも思っているのだろう。
トランクを開けて充電ケーブルを取り出すと、彼らの視線はさらに信じられないものになる。
「ベンテイガ」のバッテリーは、1時間あたり最大7.2kWの充電が可能なため、フル充電には約2時間半かかるが、家庭用コンセントでは6時間以上かかる。
贅沢なインテリアをじっくり見るには十分な時間だ。
素材の選択と品質感の点では、「ベンテイガ」は、「コンチネンタルGT」にこそ及ばないものの、私の好みとしては、「ベントレー ベンテイガ」は他の追随を許さないと感じている。
それは、フォルクスワーゲングループの他のモデルでおなじみの、ステアリングコラムレバーやステアリングホイールボタンのような小さなディテールに現れている。
小さな不満はあっても、それらは非常に高いレベルでの不満だ。
「ベンテイガ」は、内燃機関が加わる前の純粋な電動モードでは、最高速度135km/hに達することができる。
この移行は非常にスムーズで、まさにベントレーらしい。
バッテリーが空になると、V6ガソリンエンジンを常用しなければならない。
内燃機関が余剰電力でバッテリーを充電するモードは備わっていない。
推進力は常に十分で、音も控えめだ。
0から100km/hまで5.5秒で到達し、ベントレーは254km/hのトップスピードを実現している。
このエンジンはもちろん高速走行も可能だ。
しかし、2,995ccの6気筒を、記念碑的な存在であり、いまだに入手可能な6.0リッターW12と、スムーズさやパワーデリバリーの面で比較した人は、がっかりすることになるだろう。
当然のことながら、V6はこれらの分野では追いつくことはできない。
一方、「ベンテイガ ハイブリッド」の強みは他にもある。
ガソリンタンクの容量が75リットルで、85リットルのV8/W12バージョンよりも小さいにもかかわらず、英国では、最大693kmとされている複合航続距離が挙げられる。
しかし、100kmあたり3.3リッターという複合消費量は幻想であり、現実には達成できないことは、ほとんどのプラグインハイブリッドのオーナーにとって明らかだろう。
なぜなら、バッテリーが空になると、追加のバラストが走り回るからだ。
それでも我々は、2.6トンを超える重量を持つ高級SUVの消費量に、嬉しい驚きを覚えた。
「ベンテイガ」は、今回、100kmあたり11.8リッターを消費した。
この値が現実離れしていないことは、過去のテストでは、100kmあたり12.2リットルと計算されていたことで証明されている。
ベントレー ベンテイガ ハイブリッド試乗車価格:260,965ユーロ(約3,470万円)
念のため、「ベンテイガ ハイブリッド」に、少なくとも197,800ユーロ(約2,630万円)を費やすオーナーの人々は、消費に関しては小数点以下をあまり気にしていないだろうということを指摘しておく。
さらに言えば、我々の今回のテスト車には、約6万ユーロ(約800万円)相当の追加装備が搭載されていたので、乗り換え費用を含めた定価は260,965ユーロ(約3,470万円)という立派な金額になった。
この金額をもってすれば、もちろん内燃機関で550馬力の「ベンテイガV8」も選択肢に入ることになるのだが・・・。
結論:
「ベントレー ベンテイガ ハイブリッド」はとても印象的なSUVである。
その主な理由は、豪奢な外観と豪華な内装にある。
V6と電気モーターの組み合わせは、他のグループのモデルでおなじみのものだが、快適な「ベンテイガ」には予想以上によく似合っている。
そのハイライトは、静かなスタートアップと、それに伴う通行人の信じられないような視線だ。
しかし、同じパワートレインを搭載した「アウディQ8 60 TFSI e」が95,200ユーロ(約1,265万円)から販売されていることを考えると、今回のテスト車の価格が25万ユーロ(約3,325万円)を軽く超えるのは、間違いなく高額だ。
電気自動車や高度なシステムの自動車は、高級車から発展し、普及するべきだと思っている。電気自動車は一番小さい、軽自動車レベルからという考え方も正しいが、より複雑なシステムを持つ自動車は高級なモデルから、というのが正しい。
なぜならコストを気にせず、どんどん新しい技術や素材などを実験的に使用することもできるし、そういう突撃隊長みたいな役割としても高級車はあるべきだ。
そう考えると、先日発表されたように、ロールス・ロイスがEVとなったり、今回のベントレーのようにハイブリッドシステムやEV化を進めたりすることは実に正しい方向性だし、どんどん推進するべきだ。
このクラスのユーザーには家庭におけるバッテリーの充電システムの問題や、航続距離の問題などそれほど考慮しなくても構わない案件だろうし、いくら上乗せされたとしても、買う人は買う、そういうものなのである。
そしてこのクラスの自動車がどんどんEVになることで、社会的にも、オーナーが環境に配慮している、とみられることも大切なファクターなのである。
Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Bentley Motors