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【初テスト】ACMシティ ワン 次々現れる街乗り専用小型EV 未来のタクシー?

2021年11月4日

都会ではACMシティ ワン以上のものは必要ない。それはカーゴバイクほどの大きさで、場所によっては未来のタクシーになるかもしれない。小型電気自動車を早速チェック!

ACMのボスは、「シティ ワン」の参考車両として、航続距離の多さから「VW e-Up」、価格的には「デイシア スプリング」、デザイン面からは「ホンダ エレメント(2000年代の初めにアメリカで販売された5人乗り5ドアSUV)」の3台を挙げている。
疑問の余地はない。ポール ライボルトは、自分たちのベンチマークを、決して低く設定しているわけではないのだ。

シティ ワンの主な市場はアジアだ

アジアのために、アジアで作られた。シティ ワンは、アジアでは10,000ユーロ(約134万円)程度になると思われる。しかし、実際にはヨーロッパでは15,000ユーロ(約200万円)になると思われる。

ミュンヘンを拠点にする、ACM社の庭に、つい先日まで、「IAAモビリティショー」で注目を集めていた「ACMシティ ワン」があった。
ある人は「おんぼろ自動車だ」と言い、ある人は「賢いコンセプトだ」と表した。
ACM(Adaptive City Mobility)は、かつてドイツ連邦経済省の灯台プロジェクトとして出資、設立されたベンチャー企業だ。
現在は、徐々に新型小型EV、「シティ ワン」の量産に向けて動き出している。
2023年以降、「シティ ワン」は主要なターゲット市場である、アジアで製造されることになっている。
アジアでは、タクシーやライドハイリング用の小型電気自動車として、約1万ユーロ(約134万円)相当の価格で販売される予定だ。
一方、ヨーロッパでは、15,000ユーロ(約200万円)程度の価格になる可能性が高い。

生産モデルは少し大きくなる

少し狭い。生産モデルに比べて、プロトタイプは15cm狭く、10cm短くなっている。

さて、いよいよ生産モデル用のプロトタイプを運転してみよう。
プロダクションマネージャーのライナー キュールヴァインは、今回のプロトタイプの薄いシートメタルの下に、「ルノー トゥイジー」電動モーターが搭載されていると説明する。シリーズ生産では、「シティ ワン」には、34馬力の電動モーターが搭載される。
電動モーターとトランスミッションユニットは、シェフラー(自動車、航空宇宙、および産業用の転がり軸受のドイツのメーカー)が供給する可能性がある。
しかし、その場合でも、「シティ ラナバウト」にはなりえない。
さて、話を始める前に周りを見てみよう。
ライボルトは、比較のために「e-Up」を挙げた。
「スペースコンセプトは、私たちにとって非常に重要です。寸法は似ていますが、シティ ワンではBピラーがより後ろになり、室内がより有効に活用されています。あくまでもe-プラットフォームであり、コンバージョンではありません。シティ ワンは、アップと比べるとまだやや胸が狭いですが、それも変わっていくでしょう」。
「量産時には、幅が15cm広く、全長が10cm長くなります」とライボルトは言う。

ライボルトは、地下駐車場でこの寸法のモデルを見せてくれた。
確かに、プロトタイプでも、シティワンは大きくなったように見える。
乗客と荷物のための十分なスペースは備わっていて、リアのデジタル広告パネルもさらに大きくなっている。
リアシートを倒すと、「シティ ワン」には1,450リットルのスペースが生じる。

搭載された4基の交換可能なバッテリーは、10kWhの電気を蓄える

目玉はトランクフロアにある: そこにあるのは取り外し可能な4基の2.5kWhのバッテリーだ。

見どころはトランクの床下にある。
トランク型の2.5kWhのバッテリーを4基搭載しており、素早く交換できるように取り外すことができるようになっている。
固定された16kWhのバッテリーと合わせて、約360kmの航続距離を、100kmあたり10kWh以下の消費で実現している。
充電は、耐衝撃プラグ(8時間)または最大11kWの三相電源(2.5時間)で行う。
すべてがミニマムに聞こえるだろうが、実質、都市にはそれ以上のものは必要ない。
今回のプロトタイプでの短いドライブで、「シティ ワン」は、すでにその長所と短所を明らかにしている。
パワーとトルクは標準駆動でも切り札にはなりそうにないし、快適性やフィーリングも同様に、価格に準じたそれ相応のものだ。

内装やハンドリングはまずまず

コンセプトによく合っている。ACMシティ ワンの使用感や操作性については、ほとんど批判の余地はない。

しかし、操縦性、広さの感覚、操作のシンプルさは、かなりオーケーなレベルだ。
最高速度は110km/h、「エコ」モードでは80km/hまでしか出ないという。
「そしてそれが主な用途になる」とライボルトは考えている。
インドのムンバイのタクシー運転手になったつもりで、いろいろな基準で測ってみるのもいいかもしれない。
2021年末までに30万台の予約が入る予定だが、すでに20万台の予約が入っているという。
ポール ライボルトと彼のチームは、同価格帯の「デイシア スプリング」を分解し、「シティ ワン」と比較してみた。
ライボルドの結論は、「我々はあの車に勝てる」だった。

テクニカルデータ: ACMシティ ワン
● パワーユニット: 電動モーター ● バッテリーサイズ: 16kWh+2.5kWh×4基 ● 最高出力: 25kW(34PS) ● 充電時間: 2.5~8時間 ● 航続距離: 最大360km ● 全長×全幅×全高: 3600×1650×1670mm • 乾燥重量: 950kg ● トランク容量: 400~1,450リットル ● 最高速度: 110km/h ● 消費電力: 約10kWh/100km ● 価格: 15,000ユーロ(約200万円)より(アジアでは10,000ユーロ=約134万円より)

結論:
これ以上に環境に優しいものはない。
「シティ ワン」は、特定の都市部でのタクシー利用のためのソリューションと言える。
しかし、ベルリンではなく、カイロや北京とかの都市がターゲットだ。
そして、個人のお客さまもこれを買うだろうか?その点に関しては、我々はやや懐疑的だ。バッテリーの交換という点に関しても同様に。

タクシー専用車、それはこれからのエネルギー問題を考えただけではなく、過疎化や高齢化社会を考えた時にも大切な問題といえる。今までもタクシー専用車というのはいろいろと考えられ、作られてきた。ロンドンタクシーは一番有名だが、ニューヨークのイエローキャブもかつては専用車だったし、最近ではトヨタのタクシー専用車を街で見かけない日はないだろう。
だがそれよりももっと簡便で、街の中だけで使用する、くらいの段階で専用車を考えるということは、今後の社会において必須な問題なのではないかと思う。
そのソリューションとして、今回の「ACMシティ ワン」のような、軽便な自動車が生まれてきたことは、なかなか興味深いし、個人的には賛成したい。
航続距離もそこそこで、小さく、できればこれにいくつかの安全デバイスを付けたものが過疎地域や弱者の足として普及したら、きっと多くの人にとって福音になることだろう。でこれば運転者も、ある程度の技術さえあれば安全に運行できるような、専門ドライバーなどのジャンルが生まれたら、さらに有用なのではないだろうか。

Text: Hauke Schrieber
加筆: 大林晃平
Photo: ACM