【ひねもすのたりワゴン生活】9日間、2000㎞のぐうたらワゴン旅 その3

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琵琶湖をぐるりと回りたい…そんな想いで旅は始まった

 9日間の旅はさほどの気負いもなく始まった。そりゃそうである。これから向かうのは、気分次第、その日暮らしのような旅……気負いたくても気負えない。
 夜明け頃、世田谷から東名に乗った。向かう先は滋賀県の琵琶湖。取材では数えきれないほど訪ねているけれど、ほとんどは撮影のために湖上で時間を費やした。暗いうちに現地に着いて、日が沈む頃に撤退、東京に戻る…そんな流れだった。陸に上がるのは昼食でマリーナや港に着岸するくらいのものだから、琵琶湖の周りをじっくりと見たことはほとんどなかったのである。だから、一度陸路でぐるりと回ってみたかった。
 さて、東京を夜明けに出ると、浜松あたりで一服しても、正午頃には琵琶湖周辺に到着する。昼食は東岸のどこかで、ということになるけれど、仕事では、撮影の合間に水辺のカフェの桟橋に着けてハンバーガーを頬張ったり、マリーナのレストランの日替わりランチだったり…。町なかの店は明るくなかった。さぁ、どうする。
 で、連れ合いが近江八幡の甘味処に目をつけた。ちょうど暖簾を出した頃合い。客の姿もまばらな古民家風の空間で、思いがけず美味い和食と出会うことになった。囲炉裏の縁でいただいたのは、赤こんにゃくなど、地の素材を織り込んだ品々。仕事の旅では知ることのなかった滋賀の味だ。

近江八幡は縦横に走る水路に癒される
500㎞近く走ってきて、ほっこりする味に出会えた。この旅は幸先がいい
若い頃、甘味なんて目もくれなかったのに…このひと口で疲れが癒された

 こりゃ幸先がいい。私にとって、いい宿と美味い食べ物に出会えれば、その旅はまずは及第点(笑)。それも、こんな風に思いがけずいい出会いがあると、この先が楽しみだ。さて、これからどうするか…という話になり、そこから日本海の方向へ向かい、奥琵琶湖経由で、反時計回りで走ることにした。

 目指したのは菅浦集落。30年近く前に取材で泊った時の思い出が深く刻まれていたからだ。夕方、ちょっと水辺の道を歩けば、どこか懐かしい…なんとなく怪しい…そして寂しい…横溝正史の小説の世界に迷い込んだような独特の雰囲気が漂っていた。それを思い出し、どうなっているかこの目で確かめたいと思ったのである。まぁ、真っ昼間だから雰囲気は違うだろうが、あの宿は今も残っているだろうか…軽やかに打ち返す清冽な湖北の水はそのままだろうか…そんなことが頭を巡る。この日の宿は大津。でも、到着など多少遅くなってもかまいはしない。

食事を終えて再び水路を通りかかったら、幸せな光景に出会った。やっぱり、この旅は幸先がいい

 木之本から西浅井に向かい、山間に入る。奥琵琶湖の菅浦地区は山が湖畔に迫り、集落は水辺に貼りつくように伸び、その先は行き止まりだ。だから、木之本から琵琶湖沿いに向かうことはできず、一旦、水辺を離れて山を越え、また湖に向かって降りていくことになる。
山間の道に入る手前で道の駅が目に入った。私たちは人後に落ちない道の駅マニアで、看板を見れば、反射神経のように飛び込んでしまう。まして、ここは初対面…大喜びでクルマを滑り込ませた。
 軽食や土産などを扱うごく普通の施設だったけれど、奥の冷蔵スペースを覗いて驚いた。奥琵琶湖の幸が並んでいる。シジミは艶々してふっくらと厚みがあり、ビワマスは目が黒々としていて、肌艶も見事だ。塩焼き用の切れ目も角がピンとしていて、鮮度のよさを伺わせる。どちらも琵琶湖産…ビワマスの美味さを知っている方なら、黙ってレジに運ぶだろう。こういう出会いがあるから、旅は楽しい。

 私は常々、クルマにはクーラーボックスを1台載せておくべきだと思っている。最近はドライブに出れば、道の駅に限らず、さまざまな直売所が私たちを待っていて、野菜、魚介、穀物、惣菜、調味料…そして花や野菜の苗まで、土地の幸が目白押しだ。しかし、そんな鮮度抜群の品々を求めても、それを持ち運ぶのにクルマの中は過酷な場合が少なくない。エアコンは湿度を下げるから植物には辛いし、晴天なら駐車してちょっと離れた間に車内温度は急上昇するから魚介や肉は気を遣う。
 せっかくの出会いがあっても、美味しいものを美味しいままで持ち帰るのは容易じゃないのである。そこで、クーラーボックス。折り畳み式のソフトクーラーでも、ないよりはマシだけど、保温効果なら断然ハードタイプだ。居酒屋1回分も出せば、そこそこの性能が手に入るのだから、買っておいて損はないと断言できる。
 そんなわけで、美味いモンとの出会いなんていつ訪れるか分からないのだから、クルマで出かける時にはとりあえず載せておくことにしている。な~に、空で帰ってきたっていいじゃないですか(笑)。

211初期型から後期型に乗り替えた納車の日、その足で買い物に出かけ駐車場に入ったら、どこからともなく2匹の黒猫がやってきて脇に座り込んだ。不吉な…と思ったけれど、占いや易学に詳しい友人は「それは吉兆ですよ」と笑った。たしかに、こいつと走っていると楽しいこと、嬉しいことばかりがやってくる。まだまだ手放すわけにはいかない…

【筆者の紹介】
三浦 修
BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。

【ひねもすのたりワゴン生活】
旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。

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