果たしてどっちがいいの? SUVかステーションワゴンか メーカー別ガチンコ7番勝負!

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SUV対ステーションワゴン: どっちがいいのか? スーパーSUVかクラシックなステーションワゴンか? 興味深い7メーカーのSUV対ステーションワゴン勝負。一貫して高い販売台数にもかかわらず、SUVが常に1番の選択肢であるとは限らない。多くの場合、ステーションワゴンの方が優れているのが現実だ。この事実は、我々の7番勝負でも示されている。

ここ数年、SUVの登録台数は新記録を更新し続けている。そして、その流れは2020年も変わらず、新車登録台数290万台のうち、ほぼ3台に1台がSUVやオフロード車のカテゴリーに属していた。

ステーションワゴンの方が購買意欲の高い場合が多い

ちなみに、このランキングの第2位は、不動の人気を誇るステーションワゴンを含むコンパクトカー、つまり「ゴルフとその仲間たち」である。しかし、そのシェアは約20%、つまり新規登録車の5台に1台の割合でしかない。そこで、私たちは当然のように自問する。「SUVが売れているのはなぜだろう?」、と。それは常にSUVがよりよい買い物であることを意味するのだろうか?そこで、現行のSUVモデル7台を、同メーカーの実用的なステーションワゴンと比較してみた。注目したのは、スペース、ドライビングインプレッション、日常的な機能、そしてもちろん価格だ。「BMW 3シリーズ ツーリング」と「BMW X1」、スウェーデンの「ボルボV90」と「ボルボXC90」、「VWパサート ヴァリアント」と新型「VWティグアン」など、エキサイティングな7モデルの対決があなたを待っている。
ひとつだけ事前に明らかにしておこう。登録台数が多いからといって、必ずしも能力が高いとは限らないのだ!

対決その1: BMW X1対BMW 3シリーズ ツーリング

BMWファンにとっては意味不明な質問だ。「3シリーズ」か「X1」か? コンパクトSUVは技術的にはミニ カントリーマン(前輪駆動)なので、バイエルン純粋主義に沿って選択するのであれば、3シリーズ(縦置きエンジン、後輪駆動)以外にはありえない。

厳密でない見方をしても、「3シリーズ ツーリング」の方が勝っている。スムーズな走りと機敏な動きを同時に実現し、あらゆる場面でディーゼルエンジンの190馬力を最大限に引き出し、インテリアも一段と洗練されたエレガントな印象を与える。
後部のシートが明らかに低すぎる(32cm)が、全長が27cm長い「ツーリング」では、全席で充分なスペースが確保され、特に膝周りにスペースがたっぷりと備わっている。
「X1」はトランク内には、最大1550リットルのスペースが在り、ステーションワゴンよりもトランクケースを収納できる。
そして、「3シリーズ」のほうが2,500ユーロ(約33万円)ほど、高いことも受け入れられる。「X1」よりも燃料消費量が少ない。そして、それはまぎれもなく真のBMWモデルだからだ。

結論:
素晴らしいハンドリングと、同じようなスペース条件でもやや上質な外観で、「3シリーズツーリング」が「X1」を上回っている。若干の価格プレミアムも許される。そして運転が好きなら、「X1」ではなく、「BMW 3シリーズ ツーリング」を選ぶべきだ。
勝者: ステーションワゴン
※大林晃平: 言うまでもなく「BMW 3シリーズ」はBMWが誇る、FRの定番メイン車種である。一方の「X1」は、FFを基本とするミニと共用プラットフォームのクルマ。であれば、どちらがよりBMWらしく、本質をついた自動車か、答えは明らかだろう。「X1」ももちろん悪いクルマであろうはずもないが、「BMW」の王道はやはり「3シリーズ ツーリング」である、そういう結果なのだろう。

対決その2: マツダCX-5対マツダ6ステーションワゴン

どちらもグッドルックスを備えた2台だが、我々の好感度は明らかに「CX-5」のほうが高い。
ステーションワゴンに比べて、背が低く(マイナス26cm)、当然背が高い(プラス20cm)のにもかかわらず、SUVは同等のスペースを確保している。最大トランク容量こそ数リットル小さくなるものの、後席の風通しは良くなっている。そして、足をあまり曲げなくて済むので、よりリラックスできる。
「CX-5」は「マツダ6」に比べて、リアベンチと車両フロアの距離が25mm大きい。運転していても些細な違いしかない。どちらも必ずしもスポーツカーではないので、「CX-5」のやや落ち着いた性質はほとんど気にならない。
また、性能や燃費の面でも、ステーションワゴンのほうがごくわずかに有利だ。しかし、意外なことに価格は高く設定されている。同じ装備ラインであれば、「マツダ6」の方が「CX-5」よりも約1,800ユーロ(約23万円)も高い。

結論:
両モデルの特徴は、気持ちの良いストレートなデザインだ。「CX-5」は、ステーションワゴン兄弟に劣らない構成と性能を備えて持つ上に、コストも安い。
勝者: SUV
※大林晃平: 「CX-5」は個人的に大変よくできた車だと思っているし、今でもマツダの中のベストバイであると思う。価格も大きさも適当だし、なにより扱いやすく快適な自動車だ。一方の「マツダ6ワゴン」も完成度が高いこともビックマイナーチェンジの効用も認めるものの、基本的な設計が古いことと、「CX-5」よりも高いプライスが足を引っ張ったのだと思う、次の「CX-5」もマツダ6も、3リッターの直列6気筒エンジンになると言われているが、大幅に価格が上昇したり、さらにロングノーズになったりしまわないか、やや心配だ。

対決その3: プジョー3008対プジョー308SW

プジョーが私たちに提示する選択は簡単ではない。一方では、車のようなハンドリングが心地よいSUVの「3008」、もう一方では、巨大な充電能力を持つステーションワゴンの「308SW」だ。

フランスメーカーのステーションワゴンの後部には最大1660リットルが備わっている一方、SUVの「3008」はそれよりも200リットルほど少ない。しかし、このSUVは他の美点で輝いている。ステーションワゴンの後席は3人乗ると非常に窮屈で、背の高いゲストは頭を低くかがめなければならないこともあるが、SUVのリアには大人にも十分なスペースが備わっている。
「3008」のインテリアは、センターの大型モニターが視界の高い位置に配置されていて好感が持てる。小さなステアリングホイールも、デザイン変更の恩恵を受けたステーションワゴンのそれよりもよく機能している。
意外なことに、このSUVは高速道路では引き離されてしまうステーションワゴンよりも加速が良い。しかし価格はステーションワゴンのほうが5,000ユーロ(約65万円)近く安くなっている。これが我々の選択の決め手となった。

結論:
正直なところ、ここはほとんど引き分けだった。しかし、トランクルームの広さや価格面での「308SW」の優位性が、小さな欠点を補い、最終的にはSUVを上回っている。
勝者: ステーションワゴン
※大林晃平: この2台は確かに甲乙つけがたい。「308SW」は適当なサイズのステーションワゴンとして佳作の一台だし、「3008」もプジョーらしさにあふれた快適で扱いやすいSUVである。もちろんどちらを選んでも間違いではないが、やはりプジョーの十八番は昔からステーションワゴンであり、セダンである。あえて勝敗をつけるならば、やはり長年の蓄積を考慮して、プジョーのステーションワゴンを選びたい、というのが本音である。

対決その4: ルノー カジャー対ルノー メガーヌ グランツアー

第一印象は、時に人を惑わす。例えば、「カジャー」の場合は、目の前に堂々とそびえ立ち、エレガントな「メガーヌ グランツアー」を簡単に凌駕しているように見える。

しかし、これは2列目のスペースに限った話で、ステーションワゴンはSUVに比べてすべての面で数センチ足らない。しかし、室内スペースそのものはどちらのモデルでも同様にリラックスして座ることができる。ステーションワゴンはフロントのスペースも広く、シート高は56cmで乗り降りしやすいが、SUVの67cmでは小柄なドライバーはほとんど登らざるを得ない。
ラゲッジコンパートメントに関しては、「グランツアー」の方がハンドバッグを1つ多く積むことができ、200kg多く牽引することができる。走りに関しては、どちらも滑らかで、140馬力のガソリンエンジンはきちんと仕事をし、プラスにもマイナスもほとんど目立たない。
そこで、価格表を見てみた。「カジャー」は、ほぼ1,000ユーロ(約13万円)のアドバンテージであなたを誘惑する。ただし、基本装備の場合。メガーヌの標準装備である「Zen」(写真)を選ぶと、2,250ユーロ(約30万円)も多く支払わなければならないことになる。

結論:
よくよく考えてみると、「カジャー」はステーションワゴンよりも多くの面でそれほど劣っていないとしても、「メガーヌ グランツアー」のほうが主に走行性能の面で賢明な買い物であることは明らかだ。
勝者: ステーションワゴン
※大林晃平:日本ではあまりに知名度が低い「カジャー」ではあるが、ヨーロッパではかなり健闘しているSUVである。それでも高速性能やハンドリングなどに関しては「メガーヌ グランツアー」の勝利であろうことは間違いない。「メガーヌ」のほうがよりルノーらしさが濃厚、そんな雰囲気はスタイルからもおぼろえながら想像がつくのである。

対決その5: トヨタC-HR対トヨタ カローラ ツーリングスポーツ

そして、次はその違いについて語ろう。明らかにステーションワゴンが勝っている。1列目はSUVよりも10cm低い位置に設置されているが、より風通しの良い空間になっている。リアでは、特に膝のスペースに大きな差が在る。これは荷物を積むときにも実感できる。「C-HR」は最大1,004リットル、ステーションワゴンはそれよりも約600リットルも多く積むことができる。
まず、共通点から見ていこう。「カローラ ツーリングスポーツ」と「C-HR」は、1.8リッターのガソリンエンジン(98馬力)と電動モーター(72馬力)を組み合わせた定評あるハイブリッド駆動システムを採用している。決してワイルドではないが、十分にパワフルで、何よりも経済的だ。「カローラ」は180km/h、「C-HR」はそれよりも10km/h低い最高速度に設定されているので、リッターあたり25km程度の燃料消費量は無理なく達成できる。そして、どちらのハイブリッド車も3万ユーロ弱(約390万円)というお得価格となっている。

結論:
走りも似ているし、コストもほとんど変わらないが、まったく異なる2台だ。ステーションワゴンはファミリーカーにもなり得るが、「C-HR」はレジャーカーでしかありえない。それも、明らかに2人乗りのSUVである。
勝者: ステーションワゴン
※大林晃平: 自動車のスタイルというのは個人の好みの領域だから、それを良し悪しに結び付けるべきではない。だが「C-HR」はあまりにもCピラー付近の死角が大きく、リアシートの圧迫感も強い。実際に運転席に座ってみるとわかるが、本当にその周囲の視界は大きく妨げられ、見切りが大変悪い。これは格好よい、悪いという問題ではなく、安全性や快適さを左右する、明らかにパッケージの問題なのではないだろうか。そういう意味でも真っ当なデザインのカローラの勝利は納得できるものである。

対決その6: ボルボXC90対ボルボV90

「XC90は」ほぼ全長5メートルでステーションワゴンの兄貴分「V90」と同じだが、ハイシートは最大7人を乗せることができます。 3列目は子供用だが。

それ以外は、利用可能なスペースは非常に似ている。フロントはSUVのほうが少し風通しよく、2列目はステーションワゴンの方が若干有利だ。
しかし、荷車としては「XC90」の方が明らかに有利だ。トランクは361リットルと大きく、牽引力もさらに0.5トンSUVの方が大きい。
235馬力のパワーで、どちらも十分に自信を持って走ることができる。ボルボは最高時速を180km/hに設定しているので、より軽い「V90」でもSUVを引き離すことができない。また、スウェーデン車は決してスポーティな走りを好まない。
そのため、3,300ユーロ(約43万円)の追加料金を払っても、より変化に富んだ「XC90」を購入することがお勧めだ。これは十分に価値のある追加料金だと言える。

結論:
「XC90」は、30cmの高さのアドバンテージを利用して収納スペースを増やし、7人乗りにしている。74センチのシート高が高すぎるとしても、「V90」には勝ち目がない。
勝者: SUV
※大林晃平: 「XC90」も「V90」も、どちらもそれぞれフルサイズ、といってよい大きさのクルマである。特に「XC90」は幅と高さが、「V90」は長さが印象的である。乗ってみればどちらも静かでスムーズなクルマであるが、よりボルボらしく伸びやかなのは「V90」なのではないだろうか、とは思う。だが全体的にスペースユーティリティの面や、リセールバリューの面では「V90」は劣勢になるだろう(特に日本では)。そういうスペースユーティリティの観点中心の結論が「XC90」の勝利の理由ではなかろうか。

対決その7: VWティグアン対VWパサート ヴァリアント

2014年に発売され、2019年にマイナーチェンジされた「パサート ヴァリアント」は、2020年からの新型「ティグアン」と対決する。どちらもゴルフをベースにしていて、つまりMQB「モジュラートランスバースマトリクス」プラットフォームを採用している。
だからこそ、どちらも実に快適で、気持ちのいい俊敏性を持っている。ドライビングパフォーマンスも近いものがあり、約40kg軽く、16センチ平らなパサートの方がわずかに有利だ。

一方、「ヴァリアント」は全長が29cm長いため、駐車しにくくなっているが、その分、リアのスペースが広くなっている。トランクには旅行用のバッグを1つ多く積むことができ、ホイールベースも11cm長くなったため、後部座席でリラックスすることもできる。
しかし、「ティグアン」の方が座高も高く、背の高いゲストでも後部座席に座りづらいということはほとんどない。また、150馬力のTDIと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせでは、ステーションワゴンに比べて1130ユーロ(約15万円)も安くなっている。

結論:
「ティグアン」は、「パサート ヴァリアント」に比べて、より現代的で、ほとんど小さくもなく、遅くもない車だ。このコンパクトSUVが「パサート」よりも安価であることも、間違いなく「ティグアン」を優位に立たせている。
勝者: SUV
※大林晃平: 「パサート ヴァリアント」が負けたのは残念ではあるが、これはもともとのクルマの出来、つまりは完成度が「ティグアン」のほうが上だったためだと思う。「パサート ヴァリアント」の素性の良さはよく理解しているものの、実際には「ティグアン」のほうがより丁寧に煮詰められたクルマだったのではないかと考えられる。最近のフォルクスワーゲンの完成度には、こういう車種によるばらつきがあるので、購入の際には慎重な検討が必要となるだろう。

最終結論: ステーションワゴンは依然としてクールだ。

最近、誰もがSUVを求めて実際に購入しているにもかかわらず、クラシックなステーションワゴンは再びその素晴らしい機能性と優れた価値を証明した。リアに広々としたボックスを備えたコンセプトは完璧に機能しており、トラックのような重苦しい運転感覚を持つことなく、巨大なスペースと優れた輸送能力を実現しているからである。もちろん、車高が高く、ハイシーターであるSUVは、走りはとてもいいが、それでも物理的に走行性能が低く、コストも高くなる。というわけで、今回はステーションワゴンが4:3のスコアで勝利を収めた。しかしこの結果は、あくまでも「今のところは」という注釈付きだ。なぜならSUVは日進月歩を続け、常に良くなっていっているからだ。

そうは言っても、物理的な壁を超えることはできないし、ワゴンとSUVは大きさも重さも違う限り、どちらが圧倒的に優れる、という結果を生み出すことはあり得ない。当たり前のことだが、あなたがどんな車を欲しいのか、という命題をはっきりさせればさせるほど、正しい選択ができるだろう。その場合、折衷案として、ワゴンの車高をあげた、クロスモデルのようなSUVも存在しているが、その場合でもその車が両方の良いとこ取りに100%なっているかというと、それもケースバイケースであるし、たいていの場合は、どこかに必ずウイークポイントも存在することを忘れてはならない(たいていの場合、タイアとか燃費とか、乗り心地といった面でワゴンに劣るし、走破性はもちろんSUVを超えることはできないのだから、どっちつかずになってしまう場合だってあるだろう)。

個人的な話を暴露すると、私は最近数年乗っていたSUVをワゴンに変えた。その昔はずっと長年にわたり、ワゴンに乗っていたのだが、その後SUVを数台乗り換え、またワゴンに戻った。SUVにはSUVの良さがあり、特に見晴らしの良さに由来する取り回しやすさと渋滞での楽な感じはありがたかった。その一方、ワゴンのもつコーナリングでの安定感や高速での空気抵抗の少なさによる好燃費性能などは、はやり一枚上手である。といったようにどちらも一長一短、甲乙つけがたい。やはりすべてはどんな車を必要としているかという、ユーザーの選択が最終的なジャッジとなる。私の普段の使用にはSUVほどの車高も必要なく、街中と高速を使う通勤ではワゴンのほうが使用目的に合致しているから、というのが理由だが、なによりワゴンのほうが人気も低く、中古車市場価格がSUVよりも大幅に安かったため、というのも大きな理由である。また世の中SUVばかりで、街中がSUVだらけなので、あえて時代遅れかもしれないがあえてワゴンに乗る、というのも理由かもしれない。そういう世の中の流れからちょっと外れて、格安で便利な中古実用車を購入できるという意味でも、今、ワゴンはなかなかおススメなのである。

Text: Gerald Czajka, Tim Dahlgaard, Dennis Heinemann, Mirko Menke
加筆: 大林晃平
Photo: Toni Bader / AUTO BILD