ゴードン マレー オートモーティブT.50Sニキ ラウダ その詳細と名前の由来

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ゴードン マレーとニキ ラウダ 1970年代後半からブラバムF1チームでチームメートとしてともに戦い勝利し絆を深め友情を温め続けたエンジニアとレーサーの両レジェンドが今1台のスペシャルモデルとして結実した 全情報

ゴードン マレー オートモーティブT.50の超限定スペシャルモデルは「T.50sニキ ラウダ」というモデル名で発表された。ゴードン マレー オートモーティブ「T.50s」は25台しか製造されず、価格は400万ユーロ(約5億2千万円)以上とされている! F1世界チャンピオンのニキ ラウダにちなんで命名された理由を解説!

「GMA T.50」、それは伝説のマクラーレンF1の非公式な後継モデルの名前だ。
ゴードン マレー オートモーティブが製作したこの車は、最後のアナログハイパーカーとして歴史に名を残すことになるかもしれないと言われている。
その核となる要素は、高回転型の自然吸気V12エンジン、クラシックなマニュアルトランスミッション、特徴的なセンターシートポジション、そして300万ユーロ(約3億9千万円)を超える価格設定であった。
2020年8月に発表された「T.50」は、大反響を呼び、世界中の自動車メディアや新旧自動車ファンの間で熱く語られた。
そして半年後となる今、ゴードン マレー オートモーティブは、「T.50」の「ニキ ラウダ」バージョンを発表したのだった。

➤ 名前
➤ デザイン
➤ エンジン
➤ 価格

「T.50s」に「ニキ ラウダ」という名がついた理由

2021年2月22日、「ゴードン マレー オートモーティブT.50sニキ ラウダ」と呼ばれる、とてつもなく高価なトラックツールが発表された。
ちなみに、この日は、「T.50sの名前にある、レーシングレジェンドである「ニキ ラウダ」の誕生日で、彼の生まれた日にあわせてプレゼンテーションはおこなわれた。
マレーとラウダがかつて親しい友情を持っていたことは特筆に値する。
1970年代後半、ゴードン マレーはブラバムF1チームのコンストラクターを務めていて、1978年にラウダがフェラーリからブラバムに移籍した最初のシーズンに、スウェーデンのアンデルストープで勝利を手にした。
その当時F1マシンに供されたテクノロジーこそ、マレーが40年以上後の「T.50」や「T.50s」にも活用したものだ。
3度のF1世界チャンピオンであるニキ ラウダを称えるため、マレーはラウダの家族と相談の上、長年の友人であるラウダにちなんで「T.50s」の正式名称を決定した。

ラウダの家族と相談した結果、マレーは正式にT.50sに親友のニキの名前をつけることとなった。

マレーにとって非常に重要なことは、「T.50s」が、ただ単に「T.50」の軽量化&強化バージョンではないということだ。
レーシングバージョンの「GTR」が、ロードゴーイングバージョンに基づいて作り上げられたものだという「マクラーレンF1」の彼の天才的アイデアとは異なり、「T.50」は、最初から並行して2つの異なる方向に沿って開発された。
比較的飾り気のない「T.50」と、公道走行承認なしの過激なレーシングバージョン「T.50sニキ ラウダ」というものだ。
そのためこの25台限定の「T.50s」は、モノコックやエンジンの大幅な変更が施され、新しいシーケンシャルトランスミッションが採用されている。

T.50s用大型リアウィング

エクステリアデザインの違いも大きい。
「T.50」では、マレーはカンチレバーのウィングと特大のスプリッターを意図的に省いている。
一方で、「T.50s」には、巨大なリアウィングがリアにそびえ立ち、「ニキ ラウダ」のレタリングが施されたフィン、大幅に大型化されたディフューザー、XXLサイズのフロントスプリッターを備わっていて、文字通り、非常にシャープなルックスとなっている。
もちろん、コアとなる400mmブロワーも「T.50s」では見逃せない。
これにより、このレーシングマシンは、最大で1,500キロものダウンフォースを発生させることになる。

リアエンドが壮観だ。「ファンカー(Fancar)」というレタリングは400ミリタービンのことだ。

711馬力のコスワース製V12自然吸気エンジン

しかし、現在の多くのスーパーカーやハイパーカーとは異なり、「T.50」と「T.50s」は、決して純粋な数字や、より高い最高速度の数値を競い合っているわけではない。
最高速度が321~338km/hの「T.50s」は決して遅いわけではないものの、マレーによれば、レーシングバージョンは、ドライバーにフィルターのかかっていないサウンドで最高のドライビング体験を提供することを目的としているとのことだ。
その心臓部はコスワースが設計した3.9リッター自然吸気V12エンジンで、「T.50s」では11,500rpm時に711馬力と485Nmを発生する(T.50の場合: 663馬力、467Nm)。
V12の最高回転数は12,100rpmという驚異的なものだ。
ロードバージョン「T.50」との直接比較では、「T.50s」の開発エンジニアたちは、エンジンで約16キロ、トランスミッションで約5キロの軽量化に成功している。

マクラーレンF1のようなセンターポジション: 左側の助手席はオプションで、選択解除も可能となっている。

T.50よりもさらに高価

「T.50s」の乾燥重量はわずか852kg(!)で、エアコンとサウンドシステムを装備した「T.50」より134kgも軽い。
そしてそれだけでなく、プロジェクト開始時にマレー氏が掲げた目標の890kgをも大幅に下回っている。
25台の超限定生産モデルの単価は430万ユーロ(約5億5千万円)というものだ。
限定生産モデルということもあって、2021年末に生産を開始する予定の「T.50」よりもかなり高価になっている。

ここで急遽購入を決定した方へのアドバイス。
「T.50」もすでにあと数台しか残っていないとされる一方、マレーはレーシングバージョン「T50sニキ ラウダ」のために、さらに非常に特別なことを考え出した。
それは、25台のモデルのそれぞれに、マレーがデザインしたマシンのF1勝利にちなんだ名前が付けられるというものだ。
例えば、シャシーナンバー1には「キャラミ1974」の文字が刻まれ、希少な関連書籍とそれに付随するストーリーとともに、幸運な顧客に届けられるようになっている。

数か月前に、普通の「T.50」のレポートをお届けしたが、今回はそのさらに高性能な辛口モデルたる、「T.50sニキ ラウダ゙」の登場である。
ニキ ラウダ、と聞くと、ラウダエアとか、横浜タイアとか、炎につつまれる衝撃の映画、とかとにかく思い出多きレーシングドライバーだが、ゴードン マレーにとっても特別な存在であったのだろう。そんな彼の名前を付けた特別なモデルは残念ながらナンバープレートのつかないモデルで、つまり公道を走ることができないサーキット専用車である。
といってもレースに出るための車、ということでもないはずで、言ってみればオーナーがサーキット走行を楽しむための車、と考えたほうが良いかもしれない。
過去にもそういう例は数多くあったし、この車を買うほどのオーナーならば、他のスーパースポーツカーも多数持っているであろうから、ナンバープレートが付かないことは大した問題にならないのかもしれない。というか、本当に欲しいオーナーならば、普通の「T.50」と「T.50ニキ ラウダ」゙をガレージに並べるくらいの人物なのではないだろうか。そしそういう人物にとっては、価格などどうでもいいことなのであろう。

Text: Jan Goetze
加筆: 大林晃平
Photo: Gordon Murray Automotive