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新型メルセデスSクラス プラグインハイブリッドも登場

2020年10月31日

メルセデスSクラス(W223) S 500、ハイブリッド: そのイノベーションのすべてを紹介

いよいよ訪れた最初の試乗のチャンスで、新型メルセデスSクラスは最も先進的なクルマであることを証明して見せた。そのイノベーションのすべてをチェックする。

エアロダイナミクスがSクラスのcd値を0.22にまで下げている。 ©Daimler AG

新型メルセデスSクラスの運転席ドアが、深いクリック音とともに閉まる。上質なレザーシートのわずかなかすれる音を除けば、コックピット内には何も聞こえない。外の騒音もない。直列6気筒エンジンを始動しても、これは変わらない。電動スタータージェネレーターは、最低回転数でもS 500のエンジンに非常に大きなパワーを与えるため、2トンを超える重量のSクラスは、わずかな喘ぎ声とともに、痙攣も振動もなく始動する。435馬力のエンジンは、キックダウン時やスポーツモード時には、6気筒エンジンの典型的な音とともにドライバールーム内に静かに鳴り響く。新型Sクラスの世界へようこそ!先代はすでに優れていたが、11代目は「ラグジュアリー」を新たなレベルに引き上げている。そしてこの新型Sクラスは競合他車よりもはるか先を行っている。

サスペンションはすべての段差を滑らかに吸収する

世界の外はほとんど静かに駆け抜けていき、最高速度250km/hに簡単に到達しても、わずかな風切り音しか聞こえない。

少なくとも5.18メートルの長さと2.11メートルの幅を持つこのような大型車両にもかかわらず、フロントの新しいエアロダイナミクスとリトラクタブル(格納式)ドアハンドルは、Cd値を顕著な0.22にまで低減することに貢献している。ボディシェルに大幅に多くの防音用の新しい発泡体を採用したことで、新型Sクラス内では囁かれているすべての言葉が明確に理解できるようになった。そして優れた断熱性も同時に手に入れたのである。また新型Sクラスでは、ピッチング、ローリング、リフトアップの動きはほとんど目立たない。アダプティブシャシーは、道路のひび割れや穴を静かに吸収するからだ。摩擦を最小限に抑えることで、コンポーネントの反応がさらに速くなるのである。これを実現するために、メルセデスはラバーベアリングを部分的に廃止し、ジョイントに頼っている。これらはまた、後輪の操舵角を最大10度まで可能にしている。競争他車のリアアクスルはそれほど大きく作動しない。

新型Sクラスでは、快適性は次のレベルに達している。 ©Daimler AG

リアアクスルステアリングがAクラスよりも機敏にドライブする

リアアクスルとフロントアクスルを同方向にステアリングすることによって、60km/h以上での安定性が増し、スムーズな走行が可能になる。60以下でも、逆位相にステアリングを操ることで、より俊敏性が増す。小さなステアリングの動きにより、大きなSクラスをすばやく意図的に回転させることができる。狭い駐車場でも、新型Sクラスにオプションのリアアクスルステアリング(1,508ユーロ=約18万円)なら、小回りが今まで以上に効く。さらに慣れれば、Sクラスは正確に操縦でき、操縦時にコンパクトカーのように感じることができるようになる。それはただ感じるだけでなく、データシート上でもSクラスの回転半径が小さくなっていることは証明されている。駐車場をSクラス自体に任せたい人は誰でも、低速で利用できるよう改良された「パークパイロット(Parkpilot)」システムを使用できる。2021年には、Sクラスは自律レベル4で単独で駐車することもできるようになる。

新型MBUXは、人間工学に基づいて設計されている

オペレーティングシステムも見直された「MBUX(Mercedes Benz User eXperience)」システムは、走行中に最初のテストに合格する。12.8インチのOLED(有機物質を使ったLED)メインスクリーンは、人間工学的にうまく配置されており、メニューはとても整然としていて直感的で、すべての動きがすぐにわかる。27個のスイッチやボタンのほとんどは、即効性のあるボイスコントロールで行うことができる。メニュー、音楽、ナビゲーション、ステアリングホイールのヒーター、そしてリアブラインドまでもが音声コマンドで選択できるようになっている。

次世代ニュー「MBUX(Mercedes Benz User eXperience)」システムは操作性に優れている。たとえ運転中であっても。

拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレイ: このおまけは必須だ

拡張現実(AR)ヘッドアップディスプレイ(3,468ユーロ=約43万円)と、3D CombiSturment(1,148ユーロ=約14万円)を同時に使用した場合、目に若干の過剰的な刺激が生じることがある。それはアイアンマンのヘルメットを通して世界を見ているかのように、視界の異なる空間レベルに無数の複雑な情報が表示されるようになっているからだ。

だがなれれば、好きになること間違いなしだ。
道路上に直接ひかれたカーソルのように、道を示すヘッドアップの青い矢印で、誰ももう迷子になることはない。そして、これらの「ギミック」が気になる場合は、別のビューを選択したり、3Dモードを無効にしたり、「ミニマム」に切り替えたりすることもできるようになっている。すべての人にこのARヘッドアップオプションは強くお勧めしたい。

Sクラスのアンテナはルーフの後ろの部分の下に隠れている。 ©Daimler AG

デジタルライトが夜を昼に変える

新型Sクラスを注文する際には、オプションのデジタルライト(2,192ユーロ=約27万円)も選択しておくことをお勧めする。これを使えば、260万画素(ピクセル)のLEDが暗闇を照らし、夜間のドライブ中のストレスを大幅に軽減できる。道路標識は特別に照らされ、重要な情報は投影によって道路上に照射され、他の道路利用者を刺激することなくすべてが行われる。道路脇の通行人に光で警告しても、インテリジェントライトは、誰も眩しくならないように顔を保護する。

Sクラスの購入に際して考慮すべきこと

新しいSクラスは、一番安い6気筒のディーゼルまたはガソリンエンジンモデルを、93,438ユーロ(約1,167万円)で今すぐ購入するか、少し待ってV8モデルを購入するか、かなり待って100kmの電気航続距離を備えたプラグインハイブリッド(2021年半ば)を購入するか、はたまた、700kmの航続距離を持つフル電動のEQS(2021年の終わり)まで待つか?
その点はなかなか悩ましい。
さらに、2021年の終わりには、ドライビングアシスタントは自律レベル3で利用できるようになるものがオプションとして提供される。
さらにお金に余裕があれば前述のARヘッドアップ、デジタルライト、リアアクスルステアリングなどのオプションに投資したほうが賢明だろう。

2021年半ばには、Sクラスは電気航続距離100kmのプラグインハイブリッド車として発売される予定だ。 ©Daimler AG

いよいよ新型のメルセデスベンツSクラス試乗レポート第一弾がやってきた。最近のこの手のクルマがすべてそうであるように、まずは新しい電子デバイスがどう進化し、それがどういう風に作動し、前のメルセデスベンツSクラスにはなかった新た装備がどんなものなのかを説明しているだけで、あっという間に文字数を使ってしまう。自動車ジャーナリストだって、最近の複雑な電子デバイスをああこうだと試している間に試乗時間を終わってしまい、結局クルマそのものの本質にはたどり着けないまま終わってしまうことも多いらしい。

本当に複雑で面倒くさい時代になったものだが、やはり気になるのはクルマの本質として、今回のメルセデスベンツSクラスどうなのかということだろうが、その部分も電子デバイスとセットになって評価されてしかるべき部分ではあるので、なんとも複雑だ。

おそらくひとつ前のメルセデスベンツSクラスの完成度(特にマイナーチェンジ後のモデル)を考えれば、今回のモデルが悪かろうはずもないのだが、こればっかりは乗ってみなければわからない部分も多く、まだまだデビュー間もないSクラスだから初期の煮詰め不足の部分なども出てしまっている可能性はあるだろう。日本に上陸したら一度乗ってみたいと思うが、まだどんなエンジンの、どんなモデルが導入されるのかのアナウンスもないし、現在のヨーロッパのコロナ禍状況を見るとちょっとデビューは遅れるかもしれない。のんびり新型メルセデスベンツSクラスの到着を待ちながら、複雑な電子デバイスの解説をちゃんと読んで、少しでも理解しておこうと思う今日この頃だ。

Text: Robin Hornig
加筆:大林晃平
Photo: Daimler AG