【テスト】VWゴルフ4のスーパースポーツモデル ゴルフR32とは?

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ゴルフR32は、20年経過した今日でもその魅力と輝きを失っていない。我々は多くのゴルフファンから切望されたこの高性能で稀少なモデルを久しぶりにテストしてみた。

一見すると、ごく普通の第4世代ゴルフのような外観を持つブルーのゴルフは、特別なものには見えない。しかし、2本のテールパイプ、「R」、「32」、そしてチェッカーフラッグをモチーフにしたエンブレムは、このスーパーゴルフのスポーティな野心を示している。さらに内装では、つや消しアルミニウムで作られたペダルとギアシフトも、このゴルフが特別なものであることを示している。張り出したシートに身を任せて、300km/hまで刻まれたスピードメーターに目をやる。ゴルフにしては、300km/hとは大げさすぎないだろうか。

R32は、スポーツと快適性のバランスをうまくとっている

それは決して誇張されたものではない。R32は241馬力というパワーを持っており、6.6秒で0から100km/hにまでスプリントし、最高速度はほぼ250km/hに達する。

約20年前。その当時のコンパクトクラスの本当のトップモデルだ。古典的な方法でキーを回すと、6本のシリンダーポットが微妙なうなり声を上げながら、エンジンに命を吹き込む。さあギアレバーを「D」にして、出発だ。シャシーは張りがあり、ボディはもちろん市販のゴルフより2センチ低くなっているものの、悪路を走っても椎間板が痛みだすことなどありえない。マクファーソンストラットとローワーウィッシュボーンを備えたフロントアクスルと、鍛造ダブルとウィッシュボーンを備えたマルチリンクリアアクスルが、ダイナミックなハンドリングを約束する。アクセルに置いた足を強く踏み込むと、6気筒エンジンは、音響的な乱暴性はないものの、ドライバーの口角が上向きに動くほどの厳しい要求にもかかわらず、心地よく声を上げてくれる。

タイトだが硬すぎない。R32のシャシーは、このVWが日常使いに絶対的に適したチューニングを施している。

このトップモデルのポテンシャルを見ることはできない

そのままカーブへ。
ステアリングはダイレクトになり、問題なくコーナーを回ることができる。18インチホイールのローラーコースターは、アスファルトに爪を立て、トラクションは、四輪から、パワーの61.8パーセントはクラッチを通じてフロントに行く。リアには31.2パーセント。しかし、方向転換がギザギザで、速度が高く、半径がきついときには、このアスリートでさえ、フロントアクスルの上を押しているという事実を隠すことはできない。非常に良い仕事をしているのは、パサートW8から来ているフロントのディスク径334ミリの安定したブレーキだ。VWゴルフR32は、目を見張るほど速く、かなり高速であっても、ドライバーに謎の多くを提起しない。これは、ヴォルフスブルクのコンパクトモデルが成功するもう一つの特徴だ。とても満足のいくドライビングパフォーマンスだ。

羊の皮を被った狼。第4世代ゴルフのトップモデルは、目に見えない速さだ。

ゴルフGTIと比べると、初代Golf Rの起源はほとんど退屈なものだ

R32は、VWの全能のボスであるフェルディナント ピエヒの個人的祝福を受けて開発されたもので、彼は彼のかかわったゴルフに最後の感嘆符を付けたいと考えていた。それゆえに、ゴルフR32には、細部にこだわるテクノロジーファンが好んだ多くの機能と機微が兼ね備わっていたのだった。

装備の整ったスーパーゴルフのプライスは高い

この3.2リッターの6気筒エンジンは、高級モデルのVWフェートンにも搭載されていたパワーユニットで、2基の調整可能なカムシャフトと24のバルブを備えていた。2000年代の初めには、これは最高のエンジン技術だったのである。当初、R32は5,000台生産される予定だったが、コンパクトなアスリートは、特にアメリカで多くのファンを見つけたことにより、最終的には7,000台が生産ラインからロールオフされた。


喜びは決して安くない。
R32の基本価格は31,950ユーロ(400万円超)だが、自動エアコン、レインセンサー、キセノンライトなどのアメニティを備えた標準装備も充実している。今日では、状態の良いゴルフR32を見つけることはもはや容易ではない。さらに、2ドアのモデルよりも4ドアのモデルの方が求められている。特にDSGとの組み合わせの人気が高い。それは、この組み合わせの2台の特別モデルがあったという噂にも由来していると言われている。その2台とは?1台はピエヒ夫人の足で、もう1台はVWのR&Dのテストカーだったのだ。

むろんバーゲンとはいかない。ゴルフR32の購入には最低でも31,950ユーロ(400万円超)くらいかかる。状態の良い個体は今日では希少な存在となっている。

ピエヒらしいゴルフ、それがこのR32 であることは言うまでもない

そもそも普通のGTIだって十分に高性能で、普通のゴルフと比べたら速すぎるほどに速いはずなのに、R32 はレベルが違う。6気筒のエンジンをゴルフに積み込んで、4輪駆動(なにせクワトロの生みの親、ですもんねぇ)にして、そこにスポーティで豪華な装備も付けて、アウトバーンの追い越し車線でポルシェを追いまわすことのできるクルマを作る。ありとあらゆる、その当時考えられる装備を全載せしたゴルフ、それがR32 である。我が国でもこのR32、なかなかコアな愛好者が購入していたこともあり、その中にはとある自動車メーカーの著名エンジニアもいた。つまりそういうエンジニアの夢の組み合わせのようなスペックを持つゴルフなわけだが、このR32のあとにも、ゴルフはRシリーズをカタログモデルとして常備するようになったのを見れば、けっこうビジネスとしても成立したクルマであったことがわかる。

ピエヒがいたからこそ成り立ったこと、生み出されたものは本当に多い。気難しく変人と言われた人物ではあるが、20年前の車とはとても思えないR32を見ると、エンジニアとしても経営者としてもプロデューサーとしても天才であり、先見の明を持っていたことがよくわかるのである。

Text: Wolfgang Gomoll
加筆:大林晃平
Photo: Volkswagen