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「プラモデルはやっぱり面白い」スペシャル 『007/ゴールドフィンガー』公開60周年記念 映画に出演した中で間違いなく世界で一番有名なクルマ物語

2024年3月19日

世界一有名なナンバー「BMT 216A」

映画に出演した中で、世界で一番有名な車、それは文句なく007のボンドカーであろう。中でもボンドカーと言えばアストンマーティンDB5のことを指す、というシンパの方は圧倒的で、残念ながら私にとっては馴染みのロータス・エスプリも、ギミック満載で登場したBMW750iLも、DB5の前には霞んでしまう存在感であるといえる。

その理由は言うまでもなく、3作目の「ゴールドフィンガー」においてボンドカーとしてこの世に登場し、ボンドカーという地位を確立したのがアストンマーティンDB5だからで、いくらその飄々としたキャラクターが魅力のロジャー・ムーアも、女性には圧倒的に人気のダニエル・クレイグも、ジェームス・ボンドという存在や007を世の中に確立したショーン・コネリーというパイセンの前に出てしまえば、あなたこそがホンモノです、と頭を下げざるを得ない。初代の価値と魅力というのはそういうものなのである。

有名な「ゴールドフィンガー」との賭けゴルフシーン撮影時に、ゴルフ場で撮影したとおぼしきショット。この写真だと露出が悪いからかボンネットのエンブレムが消えてしまっているが、この後のスイスショットではちゃんとついている。また逆に、助手席のAピラー前に映っている丸いステッカーのようなものは、この後のシーンにはついていない。
Photo: Aston Martin

さて、アストンマーティンDB5は「ゴールドフィンガー」において、Qの開発室において登場して以降、「サンダーボール作戦」、「ゴールデンアイ」、「トゥモローネヴァーダイ」、「カジノロワイヤル」、「スカイフォール」、「スペクター」、そして「ノータイムトゥダイ」と8作品に登場し、さらにはハルニーダムの「キャノンボール2」にはロジャー・ムーア演じる「スパイを気取った一般人」の自動車としてコメディーにも使われるなど、とにかく人気者であるし、銀色に塗られたあの姿と活躍ぶりを見たことがない自動車エンスージャストは一人もいないと断言してもよい(実は「ワールドイスナットイナフ」にも、キング卿の葬儀に参列するシーンにDB5は出演しているのだが、本編ではカットされDVDの特典映像などでしか観られないため、あえてカウントしていない)。

実際、最新作であり最終作と言ってもよい「ノータイムトゥダイ」の撮影においてはイタリアマテーラのホテル前に止まるシーン用のホンモノのDB5 2台(うち一台はイオンプロダクション所有のDB5)をはじめ、撮影用レプリカ(といってもちゃんとアストンマーティンが作り、ものすごく速く走ることのできる、中身は最新テクノロジーのつまったDB5。レーザースキャンして型をとったあと、6速マニュアルで300馬力のエンジンを載せたそうだ)が8台(!)、その中には傷だらけになったモデルやガトリング砲部分のアップのガジェットカーと呼ばれるモデル、スタントマンが屋根の上で遠隔運転する、ポッドと呼ばれるモデル、といった、DB5風の車輛が用意された。

そのように今や大掛かりで撮影に用いられているのだが、「ゴールドフィンガー」において最初に登場した時は、アストンマーティン側の対応は大変冷淡なものであったことが知られている。

Revell社製の「ASTON MARTIN DB5 007/GOLDFINNGAR」(1/24 スケール プラスチックモデルキット)が発売された。
Photo: 桐生呂目男

当初007の制作会社であるイオンプロダクションは、アストンマーティンをボンドカーにしようと思い、アストンマーティン社にボンドカーについての説明をし、協力を依頼したところ、冷たい対応をした広報担当者は「ドクターノー」はおろかヒットしたはずの「ロシアより愛をこめて」さえ観たことがなかったというのだからあきれてしまう。広報担当者としては大失格ともいえる話だが、とにかくこりゃだめだと思った映画プロデューサーは電話をたたき切ったのだという。

アストンマーティンからけんもほろろに断られたため、映画プロデューサーは、やむを得ずよりスマートでスポーティなジャガーEタイプをボンドカーにと、ジャガーに打診したところ、こちらもあっさりと断れられたのだという。まったくアストンマーティンもジャガーも何やってんだよ、と思うような塩対応ではあるが、仮にこの時点でジャガーEタイプがボンドカーに就任したことを考えると、今ほどのいぶし銀のようなイギリスらしい魅力を演じることができたかどうか、そしてジェームス・ボンドというキャラクターそのものにも重みを加算できていたかどうか、ちょっと微妙な気持ちにもなる。

考えた挙句、あきらめきれないプロデューサーは再度アストンマーティンに依頼をしたところ、その時点でもまったく乗り気でないアストンマーティンが、「中古車なら貸してもいいが、返却すること」という条件で、しぶしぶ受けてくれたという。

アストンマーティンよ、ボンドカーの依頼を受けてくれてありがとう、と言いたいが、その時のボンドカーの内容を聞いたアストンマーティンの対応は「うーんなんだかばかばかしいし、面倒くさいなぁ」という感じだったと言うし、中古車のDB5(そのうちの1台はDB5のプロトタイプであるとされている)は、撮影終了後にアストンマーティンに返却することが条件であった。しかも返却された中古のアストンマーティンはボンドカーなどの装備を外されたのち、再び中古車としてアストンマーティンが販売するという、なんとも信じがたい処遇を受けることとなる。その時点ではまだ「ゴールドフィンガー」公開後に、ボンドカーが熱狂的な支持を受け、コーギーがミニカーを急遽発売することになるなどと考えた者はいなかったのだから仕方がないが(ちなみにコーギーの発売した「アストンマーティンDB5 ボンドカー」は世界で最も売れたミニカーなのだという)。

Revell社製の「ASTON MARTIN DB5 007/GOLDFINNGAR」は車内も映画『007/ゴールドフィンガー』のDB5を見事に再現している。
Photo: 桐生呂目男

さて、上記の「ゴールドフィンガー」に使用された4台の中古DB5の内訳は、撮影用が2台とされているが、そのうちプロモーション用が2台、プロモーション用が撮影に使用されたことはないまま、上記のように中古車として売却され、そのうちの1台は2006年に(撮影用ではないにも関わらず)、2億3,000万円で個人コレクターが購入し、もう一台のプロモーション用はオランダのコレクターが購入後、博物館に今もある。

さらにゴールドフィンガーの後の、「サンダーボール作戦」のプロモーションには別のDB5が用意され、アメリカなどでプロモーションした後、2019年には6億8,000万円で落札されている。言うまでもなく映画に使用された車輛ではなく、プロモーション用なのだが……。

またアストンマーティンDB5の登場シーンで印象深いものとして、「ゴールデンアイ」の冒頭、モナコの峠道で敵の美人殺し屋であるゼニア・オナトップ(Then you are on a Top の隠語)の運転するフェラーリF355とカーチェイスを繰り広げたピアース・ブロスナン007の乗ったDB5は、2018年にオークションに登場しており、2億5,000万円程で落札されている。

「ゴールデンアイ」の撮影には3台のDB5が使用されたと言われているが、程度の悪い個体を購入してきて手を入れた車輛が2台と、アップに耐えられる1台があったという。オークションに出品されたのはそのうち「程度の悪い、スタントに用いられた」個体(シャシー番号DB5/1885・R)だったため、意外と安いのかもしれないが、いまいち値段があがらなかった理由はピアース・ブロスナンが原因なのか、一切の秘密兵器(映画ではシャンパンを冷やすクーラーやファックスなども装備されていた設定だが、もちろんあれは別撮り)がないからかは不明。なお、オークションに登場しなかったスタント用DB5に関してはそのあとの作品、スカイフォールなどにも出演している。

一方、「ゴールドフィンガー」の撮影に使用されたDB5(シャシー番号DP/261・1)は、すべてのガジェットのついたままの個体で、この一台はまずコレクターのリチャード・ロージー氏が12,000ドル(約180万円、安いっ!)で購入した後、やはりコレクターのアンソニー・パグリーズ3世に250,000ドル(約3,750万円)で譲渡。アンソニー氏はフロリダの個人の航空機収納庫(!)に納めていたが、1997年になんと盗難にあってしまう。結局この1台は長年行方不明状態だったが、中東のコレクターの車庫に保管(盗難されて保管、というのも妙だが)されているというが、いまだ未確認のままだ。蛇足ながらこの一台が発見されれば、30億円以上は間違いないそうだ。

では撮影用に使用されたもう一台はどこにあるかというと、これまたコレクターのハリー・イエッギーという人物が購入し、まだそのまま所有している(らしい)。そんな撮影用に使用されたDB5だが、スイスのロケでは早々にクラッチトラブルで走行できなくなってしまい、大慌てでもう一台をスイスに運んで撮影したとか、あまりにもステアリングが重く速く走れなかったため、実際の「ゴールドフィンガー」におけるカーチェースシーンの映像は早回し(実話)になっているなど、苦労は絶えなかったようである。

上のショーン・コネリーボンドと、ハロルド坂田演じるオッドジョブのフィギアプラモデルは、東京都荒川区にある、童友社のプラモデル。AR7、PPKそしてホーマー発信機がセットになっている。
Photo: 大林晃平

オッドジョブはもっとも有名なボンドの適役の一人で、「アー」としか発しない(つまりスペクターに出てきたデーブ・バウティスタは、ハロルド坂田へのオマージュと考えてよい)。ハロルド坂田はハワイ生まれの日系アメリカ人で、重量挙げオリンピックメダリスト。またプロレスラーとしては、トシ東郷の名前でアメリカにおいて悪役として名をはせたが、わが国においても、力道山をプロレスに引き込んだ人物としても知られている。

プラモデルの下は1964年7月7日(木曜日)にスイスにおいて行われた、有名な峠場面の撮影風景。アングルを調整し、ゴールドフィンガーとオッドジョブが立っているロールス・ロイスを眼下に、手前にショーン・コネリーとDB5が映るように高い足場を組んで撮影している。

また映画中、スイスにある「ゴールドフィンガー」の黄金工場のシーンは、イギリスのパインウッドスタジオで撮影されているが、この際、DB5はエンジントラブルになってしまい3気筒で走行。あまりの遅さから後ろから別の車で押して撮影したというのだから、裏側など知らない方がよかったという話でもある。また後方から煙幕をはきながら走るシーンも、小道具さんがトランクルームに乗り込んで煙の特殊効果を人力で演出したが、煙の対流が悪く危うく窒息しそうになったという。映画撮影というのはなんとも大変なものである。

なお、アストンマーティンDB5だけでなく、DB4も「ゴールドフィンガー」の撮影に使用されていると言われているが、DB4はボンドカーとして搭載した特殊装備(噴出シートや、マシンガンなど)の装備の確認のため用いられ、このDB4は撮影終了後1974年までパインウッドスタジオの走行に放置されていたという。その後このDB4はパインウッドスタジオに勤務していた特殊効果デザイナーの下にわたり(推測ながら、おそらく底値で譲ってもらったのだろう)、彼のもとで維持されたあと、2010年にイギリスで競売にかけられている。

アストンマーティンDB4 GT。
Photo: Aston Martin

蛇足ながら近年、アストンマーティンはコンティニュエーションモデルとして、25台のボンドカーを制作し、約5億円で販売した。このモデルにはダミーの機関銃、スモーク噴霧器、オイル噴霧装置、防弾シールド(本当に防弾かどうかは不明)、回転式ナンバープレートなどが装備されたが、助手席のイジェクターシステムだけは装備されていない。またこのDB5はナンバーがつかないため、言ってみれば原寸大の走るミニカーなわけだが、25台はもちろん完売。作成したアストンマーティン・ワークスのポール・スパイアーズ(名前も、スパイなのか)氏によれば、「子どもの頃コーギーのミニカーを持っていたので思い入れもあり、これは自分へのご褒美のような仕事だと思いました。でも実際に作るのは大変で、新車を作る方が楽」というほどの作業だったという。

尚、現在も1963年モデルのDB5フルオリジナルモデル1台を、007の映画製作会社であるイオンプロダクションは所有しているが、これには一切のガジェット(つまり秘密兵器)は装備されていない。この1台はスカイフォールの撮影において、ダニエル・クレイグとジュディ・デンチのシーンなどで使用されていたが、アグスタ・ウエストランドAW101及びAW159ヘリコプターからの攻撃を受け、爆発炎上してしまうのは、言うまでもなく精巧なミニチュアモデルである。

この時に使用された3分の1サイズの特撮ミニチュアは最新の3Dプリンターを用いて作られており、18個のパーツで成り立っているため、ちゃんとドアもトランクもホンモノ同様に開くのだという。そのモデルに精巧な塗装や弾痕などを施したのち撮影。そのうちの1台が生き残ったためクリスティーズのオークションに登場したことがあったが、3分の1のミニカーにもかかわらず、10万ドル(約1,500万円)近い価格で落札された。やはり世界中には熱狂的な007ファンがいるという証左であろう。

残念ながらオークションで精巧なミニカーを落札できなかったあなたに朗報だが、ゴールドフィンガーの上映60周年を記念してコーギーが「アストンマーティンDB5 ゴールドフィンガーアニバーサリーエディション」をこの春発売予定。こちらは1万円以下の予定なので、欲しい方はお買い逃がしなきように。

トランクリッドには格納式の防弾板が。ナンバープレートは回転式。
Photo: 桐生呂目男

そんなボンドカーの中のボンドカーたるアストンマーティンDB5は、1963年から1965年というたった2年間だけ生産され、総生産台数は1,021台。

Text:大林晃平

今度のDB5は最高傑作のプラモデルだ。

飛び出したワイヤーホイールのセンタースピンナーは、横を走る敵のクルマをパンクさせる。
Photo: 桐生呂目男

私のような一般庶民にとっては永遠の憧れのボンドカーであるが、昨年12月のクリスマスプレゼントにはサンタクロースがDB5を届けてくれた。

Revell社製の「ASTON MARTIN DB5 007/GOLDFINNGAR」(1/24 スケール プラスチックモデルキット)である。がクリスマスシーズンに新発売されたのだ。

勿論、実車よりも小ぶりであるが、発売前の広告を見た時からキットを入手するまでのワクワク感で久々に高揚した。

これまでにもDB5のプラモデルは存在していたが、いずれも旧いキットで現在の水準でみてしまうと満足出来るものではなかった。しかし、このキットは全く新開発であり、しかも007バージョンなので狂喜乱舞してしまったのだ(旧いプラモデルキットを多少化粧直しして、新発売と銘打って販売する例もかなりある。キットの寿命を延ばす意味では、決して悪い慣例ではない。しかしファンにとっては新開発が理想であると思う)。

入手後すぐ製作に着手したが、スナップキットとなっており比較的スムーズに製作が進んだ(スナップキットとは接着剤が不要で、パチパチとはめ込むだけで組み立てられる)。

しかし本作は単なるお手軽キットではなく、実車の再現度は高く過去のDB5を含めても最高傑作の部類と思う。従ってフォルムも素晴らしい出来なので、ボディーの塗装は特にしっかり行いたい。

今回の作例では多少暗いシルバー塗装としてみた。実車のシルバー塗装は明るめであるが、暗めのシルバーにすることでよりDB5の重厚感を出せると思ったからだ。

また映画『007/ゴールドフィンガー』のDB5同様、様々なガジェットが再現されているので、特にこれらを製作する際は楽しめる。

さすがに助手席が車外に飛び出すことは無いが。ナンバープレートが回転式になっているし、トランクリッドに格納式の防弾板に弾痕のデカールを貼付する際にはクスッと笑ってしまった。

きっと本キットを発売したRevell社の担当者達も楽しみながら、キット化を進めたに違いない。

防弾板に弾痕のデカールを貼付して映画のワンシーンを再現できる。
Photo: 桐生呂目男

私は「007 ゴールドフィンガー」のDVDを再生しながらMy DB5の製作を進めたが、こんな楽しみ方もあると自分に言い聞かせている。

プラモデルの楽しみ方は千差万別、人それぞれで良いのだ。

Text:桐生呂目男