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キャンパーは男の夢だ いつかは手に入れたいモーターホーム エントリーモデル

2020年5月21日

デスレフ トレンド エディションT 7057 EB: モーターホーム、テスト

日本ではキャンピングカー(日本語英語)、海外ではキャンパー(またはモバイルホーム)は男の夢だ。特に牽引式のではなく、こういう自走式の大型キャンパーを、一度デンと構えて購入してみたいものである。
そんな自走式の大型キャンパーの一台であるデフレス トレンドは、ずばり快適性が売りだ。
スタイリッシュなインテリアで、初心者向けのセミインテグレーテッドモデルが群を抜いている。パノラマウィンドウやワイドドアなどの標準装備が充実しているため、通常ならオプションとなるいくつかの追加装備の8000ユーロ(約96万円)を節約することも可能だ。

エントリーレベルのモデルは、必ずしもモーターホーム部門の初心者だけにとっての興味深いものではない。クールに計算をするのが好きなベテランたちにとっても十分価値のあるものだ。多くの場合、エントリーモデルのキャンピングカーは、基本的な装備の追加拡大を通じて、価格上、かなりお得なものになる。それはもちろんモーターホームユーザーのニーズに合わせたもので、安全性と快適性のエクストラも含まれている。
このような事前にほぼすべてのものがセッティングされたモーターホームは、あらかじめ生産台数が計算できることによって生産コストも節約できるため、メーカーにとっても生産しやすく売りやすいものとなる。さらに、多くの場合、多くの装備を標準で装着することで、追加オプションの選択肢を減らすことによる追加費用の軽減という優位性も得られる。
その上に、操作のしやすさ、快適なインテリアデザイン、フロアプランの実用的な選択肢が追加されていれば、新規購入も乗り換えにも、十分後押しできるだろう。
その良い例が、今回の試乗車だ。クイーンベッド、または2つのシングルベッドの備わった2バージョンが用意されていたが、我々はクイーンベッド装備の、長い方であるT7057 EBを選んでテストしてみた。

部分的に統合されたクラシックのモダンなデザイン

乗り込んでみると幅70センチのボディドアの右側には、サイドベンチと調節可能なテーブルを備えたL字型のシートグループがあり、ゆったりとくつろぐことができるようになっている。
運転席側には、3つの引き出しと天井と床の食器棚を備えたアングルキッチンが隣接している。3バーナーのガスコンロとシンクは金属製のバーで仕切られている。
反対側には、AES(自動エネルギー選択システム)付きの大型冷凍冷蔵庫があり、その下には収納スペースがある。そして、洗面台、整理整頓された背の高い食器棚、たくさんのタオルホルダーがあるトイレに続いている。
扉を閉めると、ベッドの前にドレッシングエリアができる。広々としたシャワールームは、その向かい側にある。
プラスチック製の折りたたみ式の壁は、ベッドの中で快適に過ごしている眠いモーターホームのオーナーが寝ぼけて蹴っても十分大丈夫な厚みだ。
また明るい床と壁のモダンなデザインの組み合わせもセンス良く、目を惹く。

標準装備のポップアップ式パノラマウィンドウが、明るくて素敵な部屋にしてくれる。
ざっくりした生地のシートと、明るい素材の床と壁、和紙のような(?)サンシェードなど、センスがとてもよく、清潔で快適そうだ。

7.41メートルのモーターホームの取り扱いは簡単だ

フィアットのシャシーには、LEDデイタイムランニングライト、クルーズコントロール、エアコン、運転席・助手席エアバッグ、電動調整式ヒーター付きサイドミラー、ブラックアウトブラインド、高さ・傾き調整可能なシート、本革ステアリングホイールとシフトノブ、ラジオなどが備わっている。
加えて、ボディには、パノラミックヒンジウィンドウと窓付きの快適なドア、セントラルロックとフライスクリーン、日よけライト、L字型のシートとシングルベッドを日光浴エリアに変換するオプションも用意されている。さらに、車線逸脱警報システム、ハイビーム、エマージェンシーブレーキ、交通標識認識アシスト、雨センサーなどを備えた安全対策が数々装備されたパッケージ(959ユーロ=約11万5千円)が用意されているのも嬉しい限りだ。乗用車だけではなく、こういうクルマにも、どれも必要なものなのだから。
7.41メートルと聞くと、大きいなぁとつい口に出してしまうが、実はこのモバイルホームは比較的簡単に取り扱うことができる。
ベースモデルには、120馬力のディーゼルエンジンが標準で装備されているが、われわれのテストカーは、20馬力追加のバージョン(追加料金779ユーロ=約9万3千円)であった。それでも140馬力には違いないから、走行性能はソコソコというところではあるが。またシャシーは比較的快適にチューニングされているが、エンジン回転音などの処理が十分ではなく、運転席・移住空間に侵入してくる。
それでもキャンパーというものは、そもそも走ってどうこういうクルマではないし、あくまでも過不足なく目的地にいくことができるかどうかがもっとも大切なことだ。そう考えた時には、この車は十分快適だし、運転しやすいと言っても良い。そしてなによりも、目的地についてからが、キャンパーとしての真骨頂の発揮のしどころとなるのである。

デスレフの標準機能は、クルーズコントロール、運転席と助手席のエアバッグ、およびエアコンだ。キャンパーだからといって特別に変わったところはなく、もとのフィアットそのもの。シンプルではあるが過不足はないし、そもそもダッシュボードの造形をああだこうだいうクルマではない。
運転席側には、天井とベースキャビネットに加え、3つの引き出しを備えたアングルキッチンが取り付けられている。3口ガスコンロとシンクはここで組み合わされている。反対側にはAES(自動エネルギー選択システム)付きの大型冷凍冷蔵庫があり、その下には収納コンパートメントがある。コンパクトではあるが、ちょっとした食事を準備するのであればこれで十分だ。
洗面台、背の高い食器棚、豊富なタオル掛けがあるトイレ。ドアを閉めると、ベッドの前にドレッシングエリアができる。広々としたシャワールームは、向かい側にある。
プラスチック製の折りたたみ式の壁は、ベッドの中で快適に過ごしている眠いモーターホームのオーナーが寝ぼけて蹴っても大丈夫な厚さだ。
室内の全体的なセンスは垢ぬけていてコージーだ。
リアベッド前のフロアコンパートメントには、汚れた洗濯物を収納できるスペースがある。取り外し可能な床板は、隣のシャワーを使用する際に床に敷くステッププレートとして設計されている。
合理的であり、アイディアあふれる仕掛けである(だがたまに外で陽に当てて乾かすのを忘れないように。かびちゃうから)。
長さ2メートル、幅1.40メートルのリフトベッドは2人用(ダブルベッド)として適している。屋根のスカイライトルーフも解放感を醸し出すのに役立っている。
車載機器とサーモメーター(エアコンなど)のコントロールパネルは、車体ドアの左側に配置されている。これもデザインされたおしゃれで格好いいものだ。
2つの収納スペースフラップ、ラッシングレール、照明が標準装備されている。また、リアエンドを低くしたことで、150kgの積載量を実現している。数日程度の旅行なら、これで十分以上だし、折り畳み自転車やテント道具なども積み込み可能な広いスペースだ。
フィアットのシャシーには、LEDデイタイムランニングライト、クルーズコントロール、エアコン、運転席・助手席エアバッグ、電動調整式・ヒーター付きエクステリアミラー、ブラックアウトブラインド、シートの高さ・傾き調整システム、本革ステアリングホイールとギアノブ、ラジオなどが装備されている。ざっくりした生地のシートパイピングも洒落ている。視界が大変良いので、運転は大きさの割には意外と簡単である(とはいっても絶対的には大きいので停める場所には注意してほしい)。
オプションとして、パノラマヒンジウィンドウ、ウィンドウ、セントラルロックとフライスクリーン、オーニングライト、L字型のシートエリアが用意されているだけでなく、日光浴エリアをシングルベッドに変換することも可能だ。ところどころに装備されたダウンライトとか収納の扉など、細かい部分の仕上げもとてもいい。
フレームウィンドウは659ユーロ(約7万9千円)余分に費用がかかる。カーテンタイプのウィンドウはすでに工場出荷時に取り付けられている。ちょっとつり目の、悪魔くんのようなリアライトがかわいい。横の扉がカーゴスペースだ。
7.41メートルのモバイルを扱うのは比較的簡単だ。標準では120馬力のディーゼルが装備されているが、我々のテストカーは、20馬力多いパワーを備えたユニットだった(779ユーロ=約9万3千円の追加費用)。それでも140馬力だから運動性能はソコソコだが、そもそもそういう部分をああだこうだいうクルマではない。
レーンキーピングシステム、ハイビーム、エマージェンシーブレーキ、交通標識認識アシスト、レインセンサーを備えたパッケージ(959ユーロ=約11万5千円)が用意されているのは嬉しい限りだ。こういうクルマで、ツール ド フランスなどを追いかける旅を、いつかはしてみたいものである。
テクニカルデータ
排気量 2287cc
最高出力 140PS@3600rpm
最大トルク 350Nm@1400rpm
最高速度 126km/h
トランスミッション/駆動方式 6速マニュアル/前輪駆動
タンク容量/燃料タイプ 75リットル/ディーゼル
長さ/幅/高さ 7410/2330/2900mm
ホイールベース 4035mm
タイヤ 225/75 R 16 C
乾燥重量(テスト車) 2957kg
トレーラー荷重 2000kg
壁・屋根・床の厚さ 34/35/49mm
ソファ面昇降ベッド(縦×横) 2000×1250~1400mm*
車内部の高さ 2130mm
車内部の幅 2180mm
冷蔵庫/アイスボックス 142/15リットル
ガスコンロ  3口
新鮮な水/廃水タンク 125/90リットル
価格 49,999(約600万円)
テスト車価格 53,680ユーロ(約644万円)
* テストカーに組み込まれたエクストラ

結論:
デスレス トレンド エディションT 7057 EBは、装備、仕上がり具合、インテリアデザインともに申し分ない。
その価格の割には、忠実な旅のお供になる可能性を秘めており、テスト車に備わっていたオプション&エクストラを省いて標準装備のままなら、約8000ユーロ、つまり約100万円近く節約することもできる。つまり600万円ソコソコの予算があれば、こういうモバイルホームを購入することができるのだ。
これは考えようによったら大変お得と言えよう。なぜなら今やトヨタ クラウンは600万円では上級グレードを購入することはできないし、アルファードのエグゼクティブラウンジなどは諸経費を入れると800万円にも達する現状だ。そう考えれば、新たに自分だけの部屋をひとつ購入することができ、しかもその部屋が、自由に走行できる移動別荘のような可能性を持つのであれば、600万円という価格はバーゲンといってもよい。
だが現実的に、冷静になって考えた場合、クルマそのものを購入する努力よりも普段置いておく場所を確保し、また出かけた先にもこの車をきちんと停車させ、周囲に迷惑をかけないような「移動式別荘設置場所」を見つけることの方が、我が国では難しいということは言うまでもない。
たとえ普段の置き場所に関しては、都市圏でなければ意外となんとか解決できたとしても、どこかに旅行した場所のインフラストラクチャーに関しては、まだまだキャンプ場などが増えてきたとは言っても簡単に確保することが難しいのが現状である。
そういう意味では圧倒的に、アメリカやカナダやオーストラリアなどは、インフラ整備が整っているし、ヨーロッパもこの手の車で旅をするのが昔から受け入れられている土壌が出来上がっているため、どこの土地に行ってもなんとかなるのが現状である。
一度はこういうクルマで、例えばツール・ド・フランスを追いかけながら観戦してみたり、夏の暑い時期には酷暑の都市部などとっとと捨てて標高の高い土地でひと夏を過ごしたりする…。そんな夢を見ることができるクルマ、それこそがキャンパーの持つ可能性と魅力なのである。できればいつかは一人で、こういうクルマでふらっとあてのない旅に出てみたいものである(その際、配偶者と一緒だと必ずケンカになりそうだし、そもそものんびりなどできないはず、などと現実に戻っては決していけない)。

Text: Alexander Failing
加筆:大林晃平
Photo: Sven Krieger / AUTO BILD