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【JAIA輸入車試乗会】仁義なきスポーツカー対決:メルセデスAMG SL 43 vs ジャガー F-TYPE 三番勝負! その1

2023年2月10日

先攻: Mercedes-AMG SL 43

2022年に登場したR232型SLのトピックは、AMG専用モデルとして仕立てられていることである。ガルウィングドアを持つ伝説の初代300SLを別とすれば、1955年に発表された190SL以来、メルセデスSLとは富裕層が好む豪華で優雅なオープンカーの代名詞であった。しかし最新型はAMG専用となり、一転してスポーツ性を強調しているようだ。SL 43は初代300SLのようなSuper Leicht(超軽量)なスポーツカーなのだろうか。

現代車であるSL 43の車重は1780kgに達し、実際にSuper Leichtであるはずもないが、しかしステアリングを握って走らせてみると本当にそんなに重いのか疑ってしまう。全長4700mm、全幅1915mmのボディサイズはポルシェ992よりひと回り大きいといったところだが、走り出すと持て余すような感じは全くない。オープンカーにも関わらずボディはがっちりとした剛性感を感じさせ、また適度に引き締まった足周りがボディの無駄な動きを許さないため、実寸以上に小さく軽いクルマに感じさせるのだ。

加速も実に軽快。アクセル操作に即座に反応してトルクが立ち上がるのがモーターの最大の美点である。モーターで初速を稼ぎ、シフトダウンとターボの準備が間に合った頃にエンジンにバトンタッチして伸びの良さを演出するのが最近の欧州のハイブリッドエンジンだが、SL 43ではその完成度は極上のレベルに達しているのだった。「このV6エンジンはいいですね」というコメントは、助手席に座る同僚に向けた筆者の間抜けなひと言である。本当は2.0Lの直列4気筒とベルト駆動のモーターを組み合わせたシステムなのだ。システム全体の最高出力は381psに達するある種の怪物であり、予備知識を持たずに乗ったらとても4気筒とは思えない。

しかしコーナーが連続するセクションに差し掛かると、ステアリングを切る度に本当に4気筒なんだという実感がどんどん湧いてくる。とにかくノーズが軽く、シャープに回頭していくのだ。これはV6エンジンの感覚ではない。メルセデスには珍しく、早起きして空いたワインディングロードを心ゆくまで走りたくなるスポーツカーである。190SL以降のSLを指してSuper Luxury(とっても豪華)と揶揄する向きもあるが、SL 43にはSuper Leichtという言葉の方が似つかわしいと思った。

SL 43は初代300SLの持つスポーツスピリットを復活させたクルマであり、潔くAMG専用モデルとした作り手の気合いが伝わってくる仕上がりだった。幌を閉じればクーペと変わらぬ快適性をも持ち合わせており、スポーツカー好きの理想郷となり得る万能車になっている。

後攻: ジャガー F-TYPE

「さあどうぞ」とジャガー広報の方に促されて運転席に座り、シート背後に鞄を仕舞おうとして気がついた。鞄が入らない……。Fタイプのバルクヘッドはシートに密着するようにしてそそり立っており、薄手の鞄はおろか脱いだ上着を置くスペースすらない。ある意味フェラーリよりも硬派な仕立てがジャガーのスポーツカーらしいと思った。ルマン24時間レースで優勝を飾ったレーシングカーのCタイプとDタイプ、そして(当時ジャガーとライバル関係にあった)フェラーリ創業者のエンツォ氏をして「最も美しいクルマ」と言わしめた伝説のEタイプの血を引く生粋のスポーツカー、それがFタイプなのである。

2012年に登場したFタイプは、2020年のマイナーチェンジを経て、いまだ第一線で通用する実力を持つスポーツカーである。試乗車は5.0L V型8気筒のスーパーチャージャー付きエンジンを持つトップグレードであり、流行りのハイブリッドやEVでないところが最大の魅力だ。ジャガーは2020年代の後半には完全にEVに移行する計画を立てており、Fタイプは、ガソリンを音や加速やタイヤスモークに変えて大笑いできた旧き佳き時代の最後を飾るクルマになるだろう。

実際、このV8は圧巻である。絶対的な加速感はトルクレスポンスに優れる今どきのハイブリッドやEVに敵わないが、地面深くから湧き出てくるような豊かな力強さは大排気量ならではの気持ちよさだ。実用域では優等生的な振る舞いを魅せる一方で、回転が上がるほどにこのV8は叩きつけるようなビートを刻んでナスカーのレーシングカーのような雄叫びを上げ、アクセルを踏むドライバーを一種のトランス状態にしてしまう。量感に溢れるサウンドを右足ひとつでコントロールする喜びは、8気筒以上のエンジンを持つクルマを手にしたオーナーの特権である。

AWDのシャシーは、この落雷のごときV8のパワーを全く持て余さない。ボディ剛性も十分以上に高く、90年代までのジャガーに良くも悪くも見られた儚さや危うさは一切ない。コノリーレザーとウォールナットの内装を持つクラシックなジャガーの雰囲気や走り味を求める向きにはFタイプはそぐわないが、しかし、ルマンを何度も制覇した英国を代表するスポーツブランドの本気に触れたければ選択肢はFタイプしかない。これは古典的なジャガースポーツの集大成である。

結論: ジャガーの勝ち!

SL 43のような優秀な製品は今後も出てくると思いますが、Fタイプのように心情に訴えかけてくる作品はこれが最後でしょう。新車で買えるうちにぜひ。(AUTO BILD JAPAN)

ショートインプレッション by スタッフメンバーズ

● ジャガー F-TYPE
イギリスの伝統を引き継ぐスポーツカーは、小排気量化が進む現代とは逆行した、5.0リッター・スーパーチャージャー付V8エンジンを搭載、パワフルでエレガントな走りを見せてくれる。インテリアもイギリス車らしい上品な仕上がりになっている。その上品なドライバーズシートに乗りアクセルペダルを踏み込めば、大排気量ならではの猛烈な加速と、エキゾーストから低音が響く。恐らく、今後このような大排気量のスポーツカーは新車で購入することが出来なくなる可能性が高く、今乗っておくべき1台であった。(池淵宏)

● Mercedes-AMG SL 43
SLはいつの時代もメルセデスAMGのテクノロジーの最先端を感じさせてくれる。この大きなボディのスポーツカーを2リッター直列4気筒にBSG(電動ブースト)を追加した最新のエンジンにより、一世代昔の大排気量エンジン以上の猛烈なパワーと加速を体験させてくれる。インテリアから幌までメルセデスAMGの最新テクノロジーにより、速さだけでなく、ラグジュアリーも堪能させてくれる。(池淵宏)

Text: AUTO BILD JAPAN
Photo: 中井裕美、池淵宏、AUTO BILD JAPAN