カーズ ピクサーの大ヒットアニメ ”Cars”の世界

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たくさんの写真とともに楽しむピクサー名作アニメ「カーズ(Cars)」のすべて

笑えるストーリーと、微妙なギャグの数々、そして深みのあるスリルとパンチ

それが、車を主役にしたテンポの良いストーリーの『カーズ』だ。
実際のロードムービーの舞台は、伝説のルート66のどこかにある眠たげな土地、ラジエタースプリングスで、赤いレーシングカーのライトニング マックイーン(中央)は、輸送途中のトランスポーターから落下し、風変わりで愛想の良い個性派コミュニティと出会う。

うぬぼれが強く、独善的で高飛車なライトニングは、時間も忍耐も必要で、思慮深い農村部の人々の生活条件に対する理解を持ちあわせてはいないため、最初の頃は、彼らと何度も衝突する。
しかし、その村には、サリー カレラがいて、ライトニングは彼女と一緒にちょっとした小旅行をしたいと思っている。だが小生意気なポルシェレディは、ラジエタースプリングスのシンプルな車が大好きで、例えば錆びていて、ややバカなレッカー車のフックなどが彼女のお気に入りだ。したがって、当初、彼女は、気取ったライトニングを皮肉な目で見ていた。
そして、旧いが立派なストリートクルーザーのドク ハドソンが、映画の過程で、うぬぼれの強いスピードスターに、多くの教訓を与え、導いていく。
小柄なフォークリフトのグイドはいつも笑い者で、いつか本物のフェラーリに出会うことを夢見ている。グイドの友人のフィアット500、ルイージは、小さな町でタイヤショップを経営していて、もちろん大のフェラーリファンだ。

この映画の魅力的ところは、実際にあったルート66を舞台にして、どこか懐かしいような、それでいて現在の社会にも当てはまるようなテーマと題材で、とにかく自動車(だけ)を登場人物として描いたところにある。
基本的に登場人物(?)はすべて車。人だけではなく、設定されている生き物(?)はすべて車輛という、本来はあり得ない世界を、ジョン ラセターは車への愛と尊敬を込めて描いた。
 そして実際にルート66に存在したままの形の「ダイナー」も「モーテル」も、警察署も、すべてが忠実にカリカチュアライズされ、世界を形成することで、大人の観客をも、この懐かしいアメリカの世界へと導入し、子どもとともに旅をすることができたのだった。

またそこに登場する車たちも荒唐無稽な設定ではなく、現実の車社会の中で活躍する様々な車であったり、昔の名車であったりすることが多い。つまり映画「カーズ」は車社会であるアメリカの今と昔があるからこそ成立する一本であり、だからこそ自動車が大好きなエンスージアストにとっても鑑賞に堪えうる内容を持つ作品なのである。

まだの方は「CGのデジタルアニメでしょう??」と避けずに、このピクサーの傑作をぜひご覧あれ!

主人公ライトニング マックイーン。 一見、どう見てもダッジ バイパーかコルベットがモデルだが、監督ジョン ラセターによれば、「ストックカーとローラ、フォードGT40 といった曲線美を持つ昔のレーシングカーをオマージュしたもの」だそうだ。
メーター。 この車にはちゃんとしたモデルが存在しており、実際にルート66の廃業したガソリンスタンドに置いてあった。ハーベスターL170がモデルとのこと。
ドク ハドソン。 モデルとなったのは、1951年モデルのハドソン ホーネット。ミシガン州の自動車歴史博物館に、モデルとなった実車が展示されている。
映画では声優として、ポール ニューマンが担当し、彼の遺作はこの「カーズ」となった。
グイド。 フォークリフトだが、この曲線とイメージは言うまでもなく、イソ イセッタ。見かけによらず、実はものすごい技術の持ち主なのである。
ルイージ。 誰がどう見ても、フィアット500(チンクエチェント)。ひたすらフェラーリにあこがれるという設定も、いかにもだ。
黄色のボディカラーは、ルパン三世「カリオストロの城」に敬意を表して、という説もある。
カリフォルニアのピクサースタジオに、今まさに怪しい自動車が入っていこうとするところ(やらせか??)。
主人公を追い詰める「シェリフ」。 モデルは、1949年のマーキュリー ポリス クルーザー。実は良い人(車?)である。
ポール ニューマンの遺作が、この映画。自動車を愛する彼にとって、未来の子どもたちへ自動車の楽しさと魅力を伝えることができたことは、素晴らしい偉業となった。

愛すべき車のキャラクターたちの物語は、カリフォルニアの伝説のアニメーションスタジオ、ピクサーの7作目の作品だ。
300人のコンピューターの専門家たちが、初めて、自動車の世界にアニメーション映画のテーマを設定し、そのディテールのレベルとクオリティの高さで実車を凌駕した。
アニメ制作のため、彼らは動く物体を実際に広範囲に研究した。
塗料、砂、埃の専門家がアリゾナの砂漠を巡礼し、錆、汚れ、風化した色、変化する見た目をアニメーションに完全に転写するために、何人かはナスカー(Nascar)のレース場にまで、実際にレースとマシンを直に見て研究するために訪ねた。
知りたいことは数多くあった。
50年代のハドソンはどんな音がするのか? 目はどこにどのように付いているべきか? などなど。 常識的には誰もがヘッドライトの中にあるべきだと考えるだろう。「しかし、そうしたら、車はまるで這う蛇のように見えた」と、ピクサーのボス、ジョン ラセターは言う。
しかし、目がフロントガラスの中にあると、車は人間のように見え、全身が身体のようになった。

観客も、登場する虫さえも、全部自動車だ!!!
こんな映画、アメリカでなければつくれないだろう。マックイーンのトランポ係は、1985年のマック スーパーライナー。ちょっとお疲れ気味で、ついつい居眠りをしてしまう。
ピストンカップで最多の優勝をしていたのが、このキング。モデルは1970年のプリマス スーパーバード。色もそっくりだ。
ラジエタースプリングスの街。LAのディズニーランドにはこの街を実現した、このままの実物(?)アトラクションが存在している。
ラモーンズ ボディペイントというショップを営むラモーン。1959年シボレー インパラがモデルで、特徴的なテールライトもそのまま。
ヒッピー(!)のフィルモア(VWバス)と、1942年モデルのウィリス ジープのサージ。
ヒッピーと退役軍人という、あまりにもピッタリの設定を生みだせるところがさすがである。

ボンネットとバンパーがそれぞれの車に個性を与えている。

板金に光が反射する様子を再現する「レイトレーシング(ray tracing)」という技術は、まったく新しいものだった。
レース場でのレースシーンは、12万台の車両を縮尺で描くという、特にチャレンジングなものだった。
これまでの作品と同様に、細部への映画製作者の愛情に満ちた配慮は、すべてのシーンで明らかである。
例えば、フェラーリファンのルイージとグイドの2人のタイヤショップ、「カーサ・デッラ・タイヤ」。当然トランクにはちゃんとフェラーリの旗が立っていたり、ラテン系ストリートクルーザーのラモーネは、「ボディアートスタジオ」を経営していたりするものの、作った作品を自分自身で試したいがために、お客はほったらかしにされている。
ちなみに、彼の人生のパートナーのフロは、「V8カフェ」を営んでいる。「V8カフェ」とは、もちろんガソリンスタンドのことだ!

ピクサーのボスで車好きのジョン ラセター。とにかく凝り性で、ミニカーやフィギュアに囲まれている毎日らしい。
設定画の数々。実に念入りに、微細な部分まで描かれていることに注意。
3Dのモデルを実際につくり、そのリフレクションや動きを計算して描かれた。
CGのアニメーションとは、このように設定され動かされる。一見自然に見えたとしても、実際には複雑で、綿密に計算された動きなのだ

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上の画像に、色を付けたのがこの画像。だがこれではまだまだ半分も完成していない状態。

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これが完成形。後ろの背景、さびまで再現された標識、そして自然に見えるような木まで、すべてが計算され、細かく設定されたものなのだ。

この不思議な世界の発明者は、ピクサーのボスであり、車好きのジョン ラセターだ。
彼の父親は中古車販売店を営んでいた。
ラセターの夢は、映画の中で車に人間味を持たせることだった。
しかし、『カーズ』の真のヒーローは、四輪の俳優たちではなく、同僚のトーマス ジョーダンや、レース場や砂漠での影が常に正しい位置にあることを保証するティア クラターのような、非常にクリエイティブな人たちだ。
ピクサーの映画はすべて、ハリウッドの初期のように、ストーリーボード、つまり個々のドローイングで描かれたコミックのようなプレビューから始まる。
これをコンピューターから「ワイヤーフレームモデル」で絵一枚ごとに再現する。
グリッドを面で「引き締め」た後、次のステップで陰影、光の入射、影が追加される。
最後に、サビや色あせた塗料、ディテールなどの反射や特殊効果だけでなく、微妙な部分もモデル化していく。

ピクサーの人々は、アメリカを東西に走る歴史的なルート66からアイデアを得た。
その旧幹線道路で「ロックカフェ」を経営するドーン ウェルチは、型破りなポルシェレディ、サリーのお手本となった。
「ルート66」の道路沿いにある、アリゾナ州セリグマンの「エンジェルズ バーバーショップ(理髪店)」や、この地域の多数のモーテルなど、長い間忘れ去られていた典型的な建物も、「ラジエタースプリングス」を面白くする楽しいディテールのインスピレーションとなった。
ライトニングとサリーがコーナリングを楽しむ風景は、モニュメントバレーやグランドキャニオンなどの古代アメリカの風景をベースにデザインされたものだ。
テキサス州アマリロにある「キャデラック ランチ」は、天下のキャデラックの名前の由来となった山々だ。

ルート66沿いで「ロックカフェ」を経営するドーン ウェルチ。サリー カレラは彼女をお手本に作られた。
ドーン ウェルチのロックカフェ。駐車されているピックアップも、きっとモデルになったことだろう。
朽ち果てたモーテルも、映画の中に登場する、大事な設定の一つ。
いかにも昔の「ルート66」にあったような看板と、建物を、上手に美しく、楽しくカリカチュアライズしてコンピューターグラフィックスにする。それは気の遠くなるような作業であったに違いない。そしてその努力は十分以上に報われたといえよう。

信じられないほどセレブな声優たち

アニメでは、絵と同じくらい声が重要だ。
『カーズ』では、多くの役は車と関係のある有名人が声優として出演している。

女優のベティーナ ツィマーマンは、ライトニングの心を射止めたセクシーなポルシェレディのサリー カレラの声を担当した。
前述のとおり、ポール ニューマンも彼の遺作として声の出演をしているし、元F1ドライバーのミカ ハッキネンも、F1界のレジェンド、ニキ ラウダも登場した。
女優のナジャ ティラーは、ラジエタースプリングスの最古参の住人である1923年式フォードTのリジーを演じる。
俳優リック カヴァニアンが声を担当したロマンティックなフェラーリファンのルイージは、ある日夢が叶うのを目の当たりにする。本物のフェラーリが、車の世界ではもちろん「靴のブティック」である彼のタイヤショップの前に停車するのだ。
そして、そのフェラーリは何を隠そう、レジェンドF1レーサー、ミハエル シューマッハが声を担当しているのだ! 

サリー カレラの声を担当した女優のベティーナ ツィマーマン
ミカ ハッキネン
ニキ ラウダ
女優のナジャ ティラーは、1923年式フォードTのリジーの声を演じた。
ライトニング マックイーンの声を演じた俳優のダニエル ブリュール。
フェラーリの声を担当したのは、なんとシューマッハだった。
すべてのディテールが正しい。映画のロゴはまるで実在するカーブランドのようだ!
いい時代をうまいかたちで活かす。年老いたいじめっ子は、洗いざらしのヒッピーの花できちんと描かれている。
女優のベティーナ ツィマーマンがサリー カレラに声を貸す。

Photo: Pixar Animation Studios、大林晃平
Text: autobild.de