これ意外とカッコいいかも フィスカー トラモント でも、フィスカー、ってなんすカー?
2020年4月15日
このロードスター? かつてはメルセデスSL65 AMGでした
フィスカー トラモント R 230シリーズメルセデスSLベースの700馬力ロードスター。
作られたのは15台のみ。
BMW Z8、アストンマーティンDB9、アルテガGTの共通点は何か?
答えはデザイナーだ!
3台のモデルはすべてデンマーク人デザイナーのヘンリック フィスカーによってデザインされたものだ。なので、このクルマは、なんとなくそれらをブレンドし、なおかつメルセデス・ベンツSLを足して、4で割った感じの自動車になることは当たり前なのである。
フィスカーが2005年に、このトラモントを作ったことを知る人は極々少数だ。
2005年1月、ヘンリック フィスカーと彼のビジネスパートナーであるベルンハルト ケーラーは、フィスカーコーチビルドデザイン会社を設立し、米カルフォルニアのオレンジカウンティに本拠地を定めた。数か月後、彼らは2台のモデルを発表した。それがフィスカー トラモントとフィスカー ラティゴCSだ。
その後フィスカーは2011年には完全に電動化されたカルマを発売する。あのレオナルド・ディカプリオが1台購入したことでも知られる。そして本来であればフィスカー カルマはテスラのライバルとなるはずだったが、テスラのようにはうまくはいかなかった。
トラモントのベースはメルセデスSL(R230)
フィスカーコーチビルダーの最初の作品がトラモントだ。これは、2005年に発売された金属製の折り畳み式ルールを備えたコンバーチブルだが、アストンマーティンとメルセデスを合体させたものではない。
トラモントのベースは、R 230シリーズのメルセデスSLだ。このクルマを作るにあたっては、すべての安全機能を含むエンジンやサスペンションなどの技術が引き継がれ、ヘンリック フィスカーは、ただデザインだけに集中することができた。つまり、その作業工程において、フィスカーは本来の古典的なボディビルダー(コーチビルダー)に専念するだけでよかった、ともいえる。
よく見れば、そのルーフとサイドラインとサイドミラーから、メルセデスがエレガントなボディの内側に存在していることがわかる。その新しいボディはグラスファイバーとアルミで構成されており、すべて手作業で作られている。
また、フィスカーはインテリアにも大幅に手を入れ、最高級のイタリア製レザーで広範囲に装飾し直した。さらに、インスツルメンツパネルもリデザインされ、もちろんすべてのメルセデスのレタリングは削除された。その結果、トラモントにはその出発点であるSLを想起させるものはほとんどない。それでも、鑑定家たちに見せれば、ボタン、ペダル、ステアリングホイールなど、動かぬ証拠によってルーツがどのモデルであるかは検証できるはずだ。
トラモントのインテリアはイタリア製最高級レザーと独自のエンブレムで彩られている。それでもこれがメルセデスSLであることは、ちょっと車が好きな人には一目両全。(ステアリングホイールも、エアコン吹き出し口も、ライトスイッチもそのままだし、ちょっとダサい感じのエアコン・ナビの近辺なども、SLそのままだから)
V12ツインターボから最大700馬力
SL 600、SL 55 AMG、SL 65 AMGなどの、SLの中でも大きなエンジンがフィスカーには採用されたが、さらに上のエンジンを希望するわがままな人には、これまたデンマーク人である、チューナーのクリーマンとのコラボレーションのモデルも用意された。それは「パフォーマンスプラスパッケージ」と呼ばれ、本来は612馬力のSL65 AMGをさらにチューンナップし700馬力にまで向上した。
このパフォーマンスプラスパッケージによって、フィスカーは330 km/h超の速さで、4秒未満で100 km/hまで加速した。
15台のみが作られた
当初150台のフィスカー トラモントが作られる計画だったが、需要は低かった。
主たる販売不振の要因はその高い価格にあった。
まずメルセデスSLの価格100,000ユーロ(約1,250万円)超がベース車両として必要で、そこにフィスカーは(さらに)130,000ユーロ(約1,625万円)弱に相当するボディワーク代金を要求したのだった。
さらには、パフォーマンスアップのためのチューニングに、4万ユーロ(約500万円)を加算し、結局フィスカー トラモント購入のために必要な合計金額は、270,000ユーロ(約3,375万円)を超えてしまったのだった。
その結果、15台のみが作成され他に過ぎず、そのすべてが現在もコレクターの手にあり、その人の手を離れて他人の手に渡ることも稀なようだ。
今も地球上のどこかに15台は生息しているのだろうか?
Autor: Jan Götze
Photo: Werk