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【このクルマなんぼ?】走行距離12万kmの1994年製トヨタ スープラ 果たしてその落札価格は?

2022年3月2日

28年前のトヨタ スープラがオークションで、なんと元の価格の3倍で落札される。このトヨタ スープラは新車当時、全オプション装備を備えた金額は43,100ユーロ(約569万円)だった。28年の歳月と約12万kmの走行の後、大人気のこの日本車はオークションにかけられた。果たしてその落札価格は?

投資対象としてのクルマ? まれに、それが功を奏することもある。そしてそれは、常に極めて希少なクラシックカーや、超高級なスーパースポーツカーである必要もない。アメリカでは、最近、トヨタのスープラがオークションに出品された。28年の歳月と約12万kmの走行距離のJDM(Japan Domestic Market=日本国内市場向けモデル)の象徴は、なんと当時の価格の約3倍の、123,000ユーロ(約1,623万円)という金額で落札されたのだった。

もちろん、このような大幅な値上げは例外であり、しかも、維持費、保険料、サービス料などのランニングコストは、この単純計算から除外されている。とはいえ、価格面での展開には目を見張るものがある。これは主に、スープラ(そう、トヨタによれば、スポーツカーの正しい名称はスープラである)に関する誇大広告のせいである。

今回販売するスープラは、ルーフを取り外すことができるタルガ仕様だ。

5代目「スープラ」は、2019年にトヨタ社内で「A90」と名付けられたモデルで発表された。この「スープラ」は、「BMW Z4」とプラットフォーム以上のものを共有してBMWとの協力のもとで開発されたモデルだ。これまで、象徴的なスポーツカーである「スープラMK IV」は、2002年に生産が終了し、「スープラMK V」の誕生までに17年間の休止期間を経ていた。

1993年に発売された4代目スープラ

トヨタ社内では「JZA80」と呼ばれる4代目は、JDMファンだけでなく、「スープラ」の最高峰である。映画「ワイルドスピード」やゲーム「グランツーリスモ」、「ニード・フォー・スピード・アンダーグラウンド」によって、全長4.52mのトヨタ車への熱意はますます高まっていった。そうしているうちに、この日本製スポーツカーは特にアメリカで伝説となっていったのだった。

1993年、「MA70」の後継車として登場した4代目「スープラ」は、クーペとタルガが用意された。長いボンネットを持つ不朽のデザインに加え、「スープラ」はそのエンジンでも有名になった。いわゆる「2JZ」は、耐久性だけでなく、1,000馬力以上のパワーレベルでも問題ないという、膨大なチューニングの可能性を持っている万能パワーユニットとしても知られている。

特にターボモデルは人気が高い

3リッター6気筒は、2種類のバージョンがある。「2JZ-GE」が自然吸気エンジンで標準出力220馬力であるのに対し、「2JZ-GTE」は2基のターボチャージャーで煽り、標準仕様で少なくとも330馬力を発生させる。オートマチックトランスミッションは、追加料金なしのオプションとして用意された。しかし、現在では、マニュアルターボモデルがコレクターやファンに最も人気があり、できればオリジナルの状態でエアロダイナミクスパッケージを装着していることが望ましいとされている。

元ワークスでは、6気筒ツインターボエンジンの出力は330psとされていた。

新車時価格: 43,100ユーロ(約569万円)

3リッターツインターボと6速マニュアルギアボックスを搭載した、まさにそのような理想の個体が、最近、アメリカのオークションプラットフォーム「bringatrailer.com」でオークションにかけられた。ベージュのレザーインテリアに「アンスラサイトメタリック」というちょっと珍しい色の組み合わせの1994年型「スープラ」は、かつてトヨタ サンフランシスコで納車され、28年前の基本新車価格は39,800ユーロ(約525万円)相当だった。そして、レザーやサウンドシステム、特徴的なリアウィングなどのエクストラを含めると、当初の納車価格は43,100ユーロ(約569万円)だったという。

オークションで、123,000ユーロ(約1,623万円)で落札

それから28年、12万kmを走ったスープラは今回、12万3000ユーロ(約1,623万円)という驚くべき価格で落札された。高値がついたのは、現在のスープラ在庫の中では珍しく、オリジナルのコンディションが良いことが主な理由だろう。ワイドボディキット、トライバル、ガルウィングドアなどの改造を施さず、美しい形状のオリジナル17インチホイールも装着している。

1994年、特徴的なXXLサイズのリアウィングには380ユーロ(約5万円)の追加料金がかかった。

しかし、このスープラも改造がまったくないわけではなく、GReddy製のマフラー、HKS製のブローオフバルブ、KONI製のショックアブソーバー、その他ブースト圧インジケーターなどの小物も後付けされている。しかし、この価格にはすべてのオリジナルパーツが含まれており、この「スープラ」はすぐに100%オリジナルに戻ることができるのだ。

オリジナルのコンディションとエンジン&トランスミッションの組み合わせで、12万ユーロ(約1,584万円)をはるかに超える価格が妥当なのかどうか。おそらく、12万km以上走ったスープラに、これだけのお金を出す人がいるのだから、その金額は正当化されるのであろう。

12万km以上走っているのに、インテリアは極めて手入れが行き届いている印象を受ける。

ドイツでは、「スープラMK IV」はタルガバージョンのみが販売され、常にターボエンジンが搭載されていた。しかし、ほとんどのスープラが逆輸入車であるため、中古車の供給はごくわずかである。最も安価な自然吸気モデルで、4万ユーロ(約528万円)弱から市場に出回っている。運が良ければ、ターボモデルもそれほど高くはなく入手できるが、その場合、右ハンドルであることが多く、その場合ほぼ間違いなくオリジナルの状態でないことが多い。

【ABJのコメント】
スープラのこの尋常じゃない価格高騰の発端は、もちろん映画「ワイルドスピード」であろう。あの映画でスープラが大活躍し、世界中で人気を得たことは間違いない。そういう意味ではボンドカーの「DB5」や、「バック トゥ ザ フューチャー」の「デロリアン」と似たような境遇の車ではあるが、いずれにしろ実際の評価とは違う方向に独り歩きしてしまっているような印象を受ける価格ではある。とはいっても、数年前からスープラは価格上昇しており、ひたすら「映画の影響とはすごいものだ」と思っていたが、さすがに12万km走行のスープラが1,600万円超というのには驚く以外にない。

それでもこういう話は個人的に楽しいことも事実で、現実を離れ、ちょっとしたファンタジーのような世界で日本の自動車が愛されているということは嬉しいし、やはり誇らしい。これからもこういう風に愛される自動車が世界を楽しく、明るくしてくれたら、それはそれで素敵な話題なのである。(KO)

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: bringatrailer.com